九州電力は何を解除したのか?電力供給サービス(2/2 ページ)

» 2014年10月22日 17時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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敷地分割はなぜ保留のままなのか

 九州電力は、低圧接続であっても、敷地分割に当たる太陽光発電設備については依然として回答を保留する。敷地分割とは次のような設備をいう。本来の用地(事業地)を生かして太陽光発電所を建設すると出力が50kWを上回り高圧連系となるものへの「対策」だ。本来の用地を出力50kW未満の低圧の設備に分割して、異なる連系案件として電力会社に接続協議を申し込む(図3)。

 この手法を採る案件は2014年4月以降、全国で設備認定が下りていない。これは通常の太陽光発電所に対して社会的に不公平で、電力会社に負担がかかるからだという。敷地分割を進めると、高圧接続で必要な電気主任技術者の選任が不要になり、個々の連系案件ごとにメーターや電柱が必要になることが理由だ。

 図3では本来270kWの設備(高圧接続)となるものを45kW(低圧接続)×6という構成に変えている。

図3 高圧連系(左)と敷地分割を利用した連系(右)の違い 出典:総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会 買取制度運用ワーキンググループ(2014年3月25日)

説明会での質問にどう答えたか

 九州電力は10月21日、10月1日から10月6日まで同社の8支社で合計14回開催した接続保留に関する説明会の内容を発表した。

 6420人の顧客が参加し、多数の質問があった。質問内容は大きく3つに分かれるという。回答保留の対象範囲と個別協議、回答保留後の対応だ。

 回答保留の対象範囲では、水力・地熱・バイオマスについての質問が重要だ。これらの再生可能エネルギーは太陽光とは異なり、出力が安定しており、事前に出力をほぼ確実に予測できる。従って太陽光とは扱いを別にすべきだという意見である。これに対して、九州電力は昼間の発電電力が増加し、電力の安定供給に支障が生じるという意味では太陽光と変わらず、回答保留の対象としたと答えた。「当社には再生可能エネルギーを推進するという方針があり、太陽光とこれらの再生可能エネルギーの特性が違うのは確かだ。経済産業省の(総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会)系統ワーキンググループでの議論を追って、対応策を打ち出したい」(九州電力)。同ワーキンググループは10月16日に第1回の会合を開いている。

 個別協議に関する議論はこうだ。9月24日の発表でも、今回の発表でも回答保留の対象となる設備には「対策」があり得る。太陽光や風力であれば、蓄電池を併設する。バイオマスや地熱、水力は九州電力の要請に応じて出力調整をする。いずれも昼間の発電分が系統にあまり流れなくなり、電力の安定供給への影響が少なくなる。説明会の意見は、これらの対策の具体的な条件をWebサイトなどで公開してほしいというもの。九州電力は準備ができ次第、案内するとした。「実際には既に個別の相談に応じている。回答保留とは関係がないので、相談していただきたい」(九州電力)。

 回答保留後の対応については、固定価格買取制度(FIT)の買取価格(単価)に関する質問が深刻だ。単価は以下の2つの日付の遅い方で決まる。国の設備認定を受けた日と、接続契約の申込日だ。高圧・特別高圧の設備は九州電力の回答保留によって申込日が遅れる可能性がある。すると、単価が下がる可能性がある。「こちらも系統ワーキンググループの議論によって対応を考えたい」(同社)。単価が下がる方向で議論が進みそうだという。

系統ワーキンググループに関する続報:
太陽光の新規買取はどうなる、政府調査会の議論が明らかに


他の電力会社に動きなし

 2014年9月24日の九州電力の発表に続き、9月30日には北海道電力と東北電力、四国電力、沖縄電力が相次いで接続申し込みの保留について発表している(関連記事)。

 2014年10月22日現在では、4つの電力会社とも9月30日の発表内容を継続しており、近い将来に対応を変える予定はないとした。「対応は変えていない。10kW未満の設備については9月以前の取り扱いと変わらない。(出力500kW以上の太陽光発電について)30日を超える出力抑制に対して補償がないことで合意できれば受け入れ可能だ」(北海道電力)。

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