オフィスビルで使う電気機器の中で最も多くの電力を消費するのはエアコンだ。夏の電力使用量の約5割、冬でも約3割を占める。NEDOとダイキン工業はビル用のエアコン向けに2種類の新しい制御技術を開発して、年間の消費電力量を従来と比べて41%も削減した。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とダイキン工業が開発した制御技術は、一般のオフィスビルで利用するマルチエアコンを対象にしたものである。マルチエアコンは1台の室外機に多数の室内機を接続する方式で、年間のうち約9割の時間帯は「低負荷」と呼ぶ低い冷暖房能力で運転している。この低負荷の状態の電力消費量を削減する2種類の制御技術を開発した。
1つは冷房と暖房に必要な熱を運ぶための「冷媒」を制御する技術である。従来のマルチエアコンは冷媒の温度を固定していたが、その温度を負荷に合わせて変更できるようにした。個々の室内機で必要な冷暖房能力をリアルタイムに把握しながら、最適な冷媒温度を設定する。その冷媒温度をもとに、室外機から冷媒を循環させるための圧縮機の回転数を制御する仕組みだ(図1)。
この制御技術を適用することで圧縮機の効率を改善して、電力消費量を削減することができる。しかも冷媒を適切な温度に調整できるため、室内機から吹き出す空気の温度も冷え過ぎや暖め過ぎがなくなる。
もう1つの新技術はエアコンを運転していない待機状態で必要になる圧縮機のヒーターのオン/オフを最適に制御する。これで待機時の電力消費量を約15%削減できる。
2つの制御技術を組み合わせることで、室内機(冷暖同時機)の電力消費量を従来と比べて年間で約5割、室外機(外調機)で約2割を削減することができ、両方を合わせると41%の削減効果になる(図2)。
ダイキン工業は新技術を採用したビル用のマルチエアコンを製品化して、2015年3月に発売する予定だ。
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