太陽光の新規買取はどうなる、政府調査会の議論が明らかに電力供給サービス(4/4 ページ)

» 2014年10月24日 21時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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「30日ルール」を拡張する方針か

 ステップ5はベースロード電源、太陽光・風力の合計と、需要との差をいかに埋めるかという手法だ。火力は電源の仕様に応じて安定供給に最低限必要な出力まで抑制し、揚水式水力も最大限運転する。ステップ5の手法のうち、以上のものには目新しさがない。

 提案として新しいのは2つだ。1つは揚水式水力の能力の計算方法だ。揚水式水力には制約があるものの、出力(kW)の制約と出力量(kWh)の制約は異なる。そこでこれら2つを別々に計算し、接続可能量に役立てるというものだ。

 揚水発電については委員からコメントがあった。揚水しても発電できない状況が考えられるため、将来の運転予測が必要だというコメントだ。

 もう1つは30日ルールの適用方法だ。出力500kW以上の太陽光と風力は、法制度上、30日まで無補償で出力抑制ができる。前日までに通告があり、1日単位で抑制する形だ。新しい提案は4つある。太陽光の出力を500kW以上と500kW未満で計算して、出力抑制の効果を正確に計算すること、出力抑制を1日単位ではなく、1時間単位で行うこと、30日よりも日数を増やすこと、500kW以上という適用範囲を広げることだ。

 いずれも新しいルールの整備が必要になる他、発電事業者側には新しい機器の導入が求められる。影響は大きい。

 委員からは、海外の出力抑制はリアルタイムであるという指摘があった。その他、出力抑制で電気を「捨ててしまう」のであれば、(1kWh当たり)2円でも3円でも売ることに意味がある。こうした努力を電力会社が進めているのか、第三者がチェックする(制度の)必要があるという委員のコメントもあった。

 別のコメントもあった。「30日を超える出力抑制をするのであれば、買取価格を下げることを監視すべき。決定する場は(系統WGではなく)新エネルギー小委員会かもしれないが、無償の出力抑制を拡大することを提案しておきながら、価格を下げる議論をしないのはコスト最小化との関係では無責任」というものだ。

 このようなコメントを受けて、事務局は議論の範囲を狭く設定したと主張した。「(系統WGは)出力抑制を行うとこのような算定結果になったというようなファクトを与える場であり、その結果、具体的にどうするのかということは決定しない。出力抑制を拡大する場合に、指摘のような対策が必要かは、新エネルギー小委員会で議論する論点」とした。

新たな対応策は蓄電池か、それとも

 (案)では、ステップ1から5を用いて接続可能量を算定した後、図3の下側にある接続可能用の拡大を検討する。図3には設備の増強策の1つとして、蓄電池が挙げられている。

 これに対して委員から「蓄電池に過剰な期待をしている人もいるが、蓄電池にも限界がある。大きなものを設置しても需要の低い夜間等に少量しか使わず、長い間貯めるのであればコストパフォーマンスが悪くなる。蓄電池に過大な期待があるなら、それは難しいということを予め示す必要がある」というコメントがあった。これは諸外国で系統側にはほとんど蓄電池が使われていないことを考えると、妥当な意見だろう。

 さらに根源に立ち返ったコメントも委員から出た。「ドイツなどヨーロッパでは太陽光発電や風力発電が系統に接続できているのに、日本ではなぜ接続できない状況となっているのか。また、連系線容量について他国と何が違うのか。接続が制限される理由を整理するため、日本とドイツの系統規模の違いや連系線運用ルールの違いなどが知りたい」というものだ。


 系統WGの議論の前提は、電力需要の変化に応じて確実に電力を供給する方法を探るというもの。これは電力各社の姿勢と同じだ。あくまでも「乱入してきた」再生可能エネルギーを従来の手法でうまく扱う方策を探るという形をとる。

 もし、再生可能エネルギーの導入量を飛躍的に高めようとするなら、変動する電力需要に変動する電力供給で対応する仕組み作りが必要不可欠だろう。例えば、供給側を調整する再生可能エネルギーの統合制御(関連記事6)の他、需要側を調整するデマンドレスポンス、需要側の自主的な判断を助ける技術(関連記事7)などだ。

 そのためには太陽光などの変動をリアルタイムで把握、さらには出力を予測する全国を網羅したシステムが必要になる。このような需要対策の形があり得るのではないだろうか。

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