3Dプリンタで都市を建設、深海で100MW発電自然エネルギー(2/4 ページ)

» 2014年11月20日 08時15分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

海……そこは最後のフロンティア

 同社は「シミズ・ドリームシリーズ」として、2008年にグリーンフロート構想、2009年にルナリング構想を発表している。後者は月の赤道のまわりに「腹巻き」のような巨大な太陽電池の帯を作り上げ、電力を地球に送電するというもの(関連記事)。

 前者は海面に浮かぶ直径3000m、高さ1000m級の複合都市を作り上げるという構想だ。台風の影響がなく、日射強度が最大になる赤道直下で太陽エネルギーを最大限利用する。

 今回のOCEAN SPIRAL構想では、太陽エネルギーはあまり関係がない。海洋(深海)が秘める5つの可能性に着目した構想だ。事実上無限の可能性があるのだという。

 エネルギーに関係するものはそのうち3つ。第1に海洋温度差発電だ。海面と深海の温度差を利用して、電力を取り出す(図2)。出力は100MWを想定。海洋温度差発電自体は既に実用化に差し掛かっている技術だ(関連記事)。

 図2からも一部分かるように−1000mの位置で発電用の海水を取水、−1500mの位置で養殖冷水(海水温2〜3度)を、−2500mの位置で海水淡水化用の海水を取り込む。

図2 海洋温度差発電と逆浸透膜式海水淡水化の概要 OCEAN SPIRALの「深さ」が役立つ。出典:清水建設

 第2に二酸化炭素を貯蔵するだけでなく、燃料に変える。海底メタン生成菌を利用して、地上の二酸化炭素をメタンに転換できる。第3に海底の未利用資源(レアメタル、レアアース)の持続的な回収だ。

 残る2つはまず真水の生成。深海の圧力を直接利用して、海水から真水を作り出す。逆浸透膜式淡水化処理を利用する。次に深海の水温と栄養塩を利用した「沖合」養殖漁業だ。回遊魚を養殖できるという。

 地球表面の70%は海面、そのうち80%は深海であることから、深海を生かす技術開発が環境破壊の続く地球の再生に役立つとした。

 OCEAN SPIRALはエネルギーや資源を消費する都市ではなく、エネルギーや食料を生産し、外部に供給する都市になるという。

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