400V直流コンセント、認証取得で安全確保蓄電・発電機器

サーバへの電力供給を工夫すると、消費電力量が20%も下がる。高電圧直流(HVDC)給電の利点だ。ところがコンセントでアーク放電が起こる可能性があり、安全性に不安があった。2014年11月、NTTファシリティーズと富士通コンポーネントが開発したコンセントが、米国発の認証機関であるULの認証を取得、市場でより受け入れられやすくなった。

» 2014年11月28日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 サーバへの電力供給の手法を変えるだけで、消費電力量が20%も下がる。これが高電圧直流(HVDC:High Voltage Direct Current)給電システムの利点だ。例えばNTTや複数のメーカーが電圧380Vのシステムを推進している(関連記事)。

 従来の交流給電(左上)、低圧の直流給電(右上)、高電圧直流給電(中央)について交流と直流の変換段数や、UPSとの接続を図1に示した。高電圧直流給電は変換段数が少ないため、電力の変換ロスを抑えることができる。UPSと直結することで信頼性も高い。細いケーブルを長く引き回すことができるため、設置の自由度が高くなる。

図1 HVDC給電システムの仕組みとメリット 出典:NTTファシリティーズ

特別なコンセントが必要になる

 ただし、高圧の直流を使おうとすると、交流とは異なる問題が生じる。交流と違ってコンセントの設計が難しい。

 交流は電圧が最大値(例えば100V)から0Vへ、さらに負の最大値へと1秒間に50回(または60回)変化する。このため、コンセント(ソケット)からプラグを引き抜くと、電圧が0になった時点で電流が止まる。

 ところが直流は電圧が一定だ。さらに高圧であるため、引き抜いても短時間、アーク放電が起きる。感電の危険性がある。

安全規格で認証を得る

 NTTファシリティーズと富士通コンポーネントは、このような課題を解決する400V級直流給電用コンセント(ソケットとプラグ)を開発、2010年11月から販売を開始している(図2)。

 ソケットとプラグはいずれも最大電圧430V、最大電流10Aに対応する。絶縁耐圧は2500V(1分間)。挿抜回数は5000回だ。ソケットの寸法は41×41×49mm、プラグの寸法は40×21.5×54.2mm。

図2 400V級直流給電用コンセント ソケット(左)とプラグ 出典:NTTファシリティーズ

 電流遮断時のアーク放電を防止するため、ソケット側にアーク消弧モジュールを取り付けた。通電・遮断制御を確実にする他、プラグが誤って抜けることを防ぐためにソケットに開閉スイッチを内蔵した。このスイッチと機械的スイッチが連動する。以上2つの工夫により、感電を防ぐ。ソケット、プラグとも難燃性素材を使用し、高電圧直流の危険性を減らしている。

 2014年11月27日、両社はこのコンセントがUL認証を取得したと発表した。認証の種類はUL 2695。直流給電用ソケットとプラグの安全規格である。世界で初めての取得だという。

 UL認証は電気製品などの安全性を保証するものとして、米国で標準的に利用されている。高電圧直流給電システムが北米のサーバ市場に広く受け入れられるために必要な認証といえるだろう。

 今後は、現在ドラフト審議中のIEC(国際電気標準会議)の国際規格化を狙う他、欧州安全規格の取得も予定する。

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