地球観測衛星から再エネの発電量を予測、降水レーダーが雨粒をとらえるエネルギー管理

日本のJAXAと米国のNASAが中心になって進めている地球観測プロジェクト「GPM計画」のデータを利用して、太陽光や風力による発電量を予測する取り組みが始まる。衛星に装着した降水レーダーからの情報を主体に膨大なデータをコンピュータで解析して高い予測精度を目指す。

» 2014年12月01日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 「GPM(全球降水観測)計画」は複数の人工衛星を使って、地球全体の天気予報や洪水予報を可能にするプロジェクトである。人工衛星には雨粒の位置を正確に観測する「二周波降水レーダー(DPR)」と雨の強さを測定する「マイクロ波放射計」を搭載している(図1)。これらの観測データをもとに、地球全体の降雨量などをリアルタイムに把握することができる。

図1 「GPM(Global Precipitation Measurement)計画」の主衛星。出典:JAXA

 GPM計画の推進役は日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)と米国のNASA(航空宇宙局)である。両者で共同開発したGPMの主衛星を2014年2月に打ち上げて、3月からDPRとマイクロ波放射計を使って観測を続けている。JAXAは衛星からのデータを幅広い分野で活用することを推進していて、GPMのデータをITベンダーの日本ユニシスに提供する。

 日本ユニシスは衛星からのデータと地上センサーからのデータを合わせて、太陽光や風力などによる発電量の予測システムを開発する計画だ。再生可能エネルギーの中で太陽光と風力は天候によって発電量が変動するため、各地域の送配電ネットワークで供給する電力を不安定にする可能性が問題視されている。

 GPMによる正確な降水予測データを利用すれば、太陽光や風力の発電量を高い精度で予測できる期待がある。日本ユニシスは膨大なデータをコンピュータで解析するビッグデータの手法を適用しながら、研究機関や発電事業者と共同で予測モデルを開発することにしている(図2)。さらに実証実験を通じて予測モデルの実用性を検証する。

図2 地球観測衛星からのデータをエネルギー分野で利用するプロジェクトの全体像。出典:日本ユニシス

 開発・検証した予測モデルはエネルギー管理システム(EMS)に組み込んで、再生可能エネルギーを含む電力を安定供給できるシステムとして事業者に提供する予定だ。太陽光や風力の発電量を正確に予測できるようになると、電力会社の送配電ネットワークに接続できる発電設備を増やすことも可能になる。

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