ドイツの電力会社は再エネへ、最大手のエーオンが2016年に会社分割電力供給サービス

再生可能エネルギーで先行するドイツの電力会社が原子力や火力による旧来型の発電事業の再編に乗り出した。最大手のエーオンは2016年までに原子力と火力を中心とする発電と燃料事業を別会社に分離することを決め、本体は再生可能エネルギーと送配電・小売事業に集中する。

» 2014年12月02日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 ドイツでは日本よりも16年早く1998年に電力小売の全面自由化を実施して、大手の電力会社は8社から4社に統合されている。その中で最大手のエーオン(E.ON)は欧米各国に電力事業を展開する一方、風力を中心に再生可能エネルギーによる発電事業を拡大してきた。こうした動きを加速させるため、2016年に大胆な会社分割を実行して新体制に移行することを決めた。

 現在のエーオンはグループ全体で7つの事業を展開している(図1)。このうち原子力と火力を中心とする「発電」のほか、天然ガスなどの「燃料取引」と「燃料開発・生産」の3事業を別会社に分割する。エーオン本体の発電事業は水力・風力・太陽光・バイオマスによる再生可能エネルギーに集中するのと合わせて、ドイツを中心に周辺各国で電力の流通・小売事業を拡大していく戦略だ。

図1 E.ONグループの組織(2014年3月時点)。上段左から「発電」「再生可能エネルギー」「燃料取引」「燃料開発・生産」「流通・小売(ドイツ)」「同(EU諸国)」「同(非EU諸国)」(画像をクリックすると拡大して全体を表示)。出典:E.ON

 エーオンは会社分割に踏み切る理由として、成長性の高い再生可能エネルギーの事業と、電力の安定供給を目指す原子力・火力の事業では、最適な事業構造が根本的に違う点を挙げている。過去数年間にわたってドイツ国内では顧客数が減少してきたが、さまざまな顧客向けのプログラムを実施したことで2014年は増加傾向に転じた。さらに会社分割による事業の再編を通じて顧客数の拡大を目指す。

 エーオンの発電量は2013年に2452億kWhで、東京電力とほぼ同じ規模である。電源別では火力が65%、原子力が23%、再生可能エネルギーが12%を占めている。このうち水力は6%、風力は5%、太陽光やバイオマスは1%で、特に風力の伸びが大きい。現在も発電能力が200MW(メガワット)を超える風力発電所を欧州各地に建設中である(図2)。2016年の会社分割を機に再生可能エネルギーの投資を増やす方針だ。

図2 建設中の洋上風力発電所。「Amrumbank West」(左、ドイツ)、「Humber Gateway」(右、英国)。出典:E.ON

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.