無線接続の太陽光計測システム、ストリング単位の異常検知に向く蓄電・発電機器

パナソニック システムネットワークは2014年12月、「太陽光発電所向け無線型ストリング計測システム」を発売する。異常検知に重点を置いた製品であり、発電ロスを防ぐことを目的とする。ストリングごとのデータを無線で収集するため、導入しやすいという。

» 2014年12月10日 12時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 パナソニック システムネットワークは2014年12月9日、「太陽光発電所向け無線型ストリング計測システム」を同月に発売すると発表した。「発電量を監視するというよりも、異常検知に重点を置いた製品だ」(同社)。故障を早期に発見し、発電ロスを防ぐことを目的とする。出力1MW以上のメガソーラーに向くとした。

 断線や故障、太陽電池モジュールにかかる影、温度異常を検知することが可能。「工事費を除く価格は、太陽光発電所の出力1MW当たり500万円程度」(同社)。

 システムの全体像を図1に示す。このうちネットワークカメラと頑丈タブレット以外がシステム構成に必要不可欠だ。データを収集するのは図中の「子機」。太陽電池モジュールを1列に接続したストリングごとに1台の子機を用いる。ストリング末端のジャンクションボックス周辺に子機を直列接続して使う。子機に必要な電流(通信時最大80mA)は太陽電池モジュールから直接取り出す。電源線や通信線を引き回す必要がないため、新設の発電所だけではなく、運用中の発電所にも導入しやすいという。

 子機は親機に対して電流値・電圧値を1.9GHz帯の無線で送信する*1)。子機には温度計が組み込まれており、70度以上になった場合に高温動作として、これも親機に伝える。計測周期は10秒、データ収集周期は10分だ。

*1) 欧州電気通信標準化機構(ETSI)が1992年に策定したデジタルコードレス電話規格であるDECTを用いる。見通し距離150mを保証。「高低差がある発電所や、非常に大規模な発電所に向けて、今後中継器を製品化する予定だ」(同社)。親機1台に子機128台までを接続可能。マルチホップ対応ではなく、システム導入時に子機を親機に登録する必要がある。

図1 太陽光発電所向け無線型ストリング計測システムの構成例 出典:パナソニック システムネットワークス

 図1にある「PVデータロガーPC」は発電所側に設置する。「収集したデータを用いて異常を検知するアプリケーションソフトウェアを導入したPCだ。独自の異常検知アルゴリズムを備えており、発電所ごとの条件の違いをPC内のソフトに設定する」(同社)。

 発電所ごとの条件の違いとは、例えば、ストリングの構成。ストリングごとの電流値を比較することでストリングの異常を検知できる。影の影響を把握するために、時間的な変化も調べる。図2は時間経過に従ったストリング単位の発電状況を表示したところ。異常検知の履歴一覧表示もできる(図3)。

図2 ストリング単位の発電状況を色別に表示したところ 出典:パナソニック システムネットワークス
図3 異常検知の履歴を一覧表示したところ 出典:パナソニック システムネットワークス

 同社は製品の開発に当たって、約1年半のフィールド実証試験を行った。「発電所によってはパワーコンディショナーがノイズを放出していることがある。実証試験によって親機や子機がそのようなノイズの影響を受けないことを確認できた」(同社)。実証試験に当たってはNTTファシリティーズの協力を得た。2012年12月にNTTファシリティーズが運用を開始した「F尾道太陽光発電所」(広島県尾道市、1.5MW、関連記事)である。実証試験の結果、さまざまな異常検知事例を確認でき、誤報を減らすことに成功したという。

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