3接合太陽電池セルは一般に、短波長の光吸収に適したInGaP(インジウムガリウムリン)やGaAs(ガリウムヒ素)、InGaAs(インジウムガリウムヒ素)、長波長の光に向くGe(ゲルマニウム)といった複数の化合物半導体などから適切なものを選択し、光が入射する方向に積み重ねた形をしている。
ARENAによれば、最下層に配置するゲルマニウム層に高効率化の鍵がある。太陽光の一部をゲルマニウム層が十分に変換できず、熱に変えてしまうからだ。
UNSWが2013年に公開した資料*3)によれば、ゲルマニウム層が吸収する波長のうち、短波長側、近赤外線に当たる波長900〜1100nmの部分が課題になる。そこで、この波長を素通し(透過)してシリコン太陽電池セルに導き、それ以外の波長の光を反射して3接合太陽電池セルに導く構造を作り上げる。光フィルターが機能する波長を正確に作り込み、さらに透過率と反射率のそれぞれを高めることが難しいのだという。
UNSWなど3つの団体は、今回40.4%を達成した太陽電池セルや光フィルターの性能について公開していない。
そこで、同資料から、シミュレーションの数値を紹介しよう。シミュレーションでは、300倍集光時に変換効率38.5%となるSpectrolabの3接合太陽電池セルと、80倍集光時に同26%となる米SunPowerのシリコン太陽電池セルを選んでいる。いずれも寸法は1cm角である。この状態で光フィルターを利用しないと、300倍集光の場合、変換効率は38.0%。光フィルターを最適設計・製造できれば、変換効率は同42.5%まで高まるとした。
RayGen ResourcesのCTOであるJohn Lasich氏によれば、UNSWの技術は今後数年以内に変換効率45%に到達可能だという。
*3) ACAP AUSIAPV Annual Report 2013(PDF資料)
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