被災地の太陽光発電を市民ファンドに、14億円強を地元優先で募集開始自然エネルギー

宮城県の東松島市で2013年に開始した太陽光発電事業を市民ファンドによる運営方式へ移行することになった。事業者の三井物産が地域の復興支援を目的に事業を譲渡して、ファンド運営会社が地元の企業や市民を中心に出資を募る。総額14億円強を2015年2月末までに集める予定だ。

» 2014年12月15日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東松島市は津波の被害を大きく受けた地域の1つで、復興の第一歩として公園の跡地などに太陽光発電の導入をいち早く決めた(図1)。三井物産が事業者になって市から土地を借り受け、メガソーラーを含む合計4カ所の発電設備を2013年に稼働させて運営を続けている。

図1 メガソーラーを建設した「奥松島公園」の跡地(左上部にある青く色を付けた五角形と四角形の土地)。出典:東松島市復興政策課

 この4カ所の発電設備の事業を市民ファンドへ移行して、地域の復興支援に役立てることを目指す。対象になるのはメガソーラーの『奥松島「絆」ソーラーパーク』のほかに、3カ所の駐車場に設置したカーポート型の太陽光発電設備である。

 メガソーラーの発電能力は2MW(メガワット)で、2013年8月に運転を開始した(図2)。年間の発電量は210万kWhを見込んでいる。一方のカーポート型は3カ所の合計で270kWになり、発電量は270kWhと少ないものの、停電時には非常用の電源として利用することが可能だ。

図2 奥松島「絆」ソーラーパークの全景。出典:京セラ

 4カ所の発電設備は2012年度の買取価格(1kWhあたり40円、税抜き)を適用できるため、年間の売電収入は約8400万円を見込むことができる。市民ファンドで運営する期間は2015年3月末から2033年11月末までの18年8カ月になり、累計では約15億7000万円の売電収入を想定できる事業である。

 この事業に対してファンドを運営するトランスバリュー信託は総額14億2300万円の出資金を集める(図3)。12月10日から1口50万円で募集を開始した。全体の3割にあたる4億2700万円は宮城県の県民と企業に割り当てる方針で、12月31日までは東松島市の市民と企業を優先する。残りの9億9600万円は県外から出資を募り、合計2846口の出資者を2月28日までに集める計画だ。

図3 市民ファンドの実施スキーム。出典:トランスバリュー信託

 配当は宮城県の県民と企業を対象にした「A号」が年率3.0%で、県外からの出資者が対象になる「B号」は2.5%を予定している。さらに発電量が想定を上回って余剰の収益が発生した場合には、管理費用を控除した後の収益を出資者に還元する。発電設備の運営・管理は従来と同様に三井物産グループが引き続き担当することになっている。

 このところ全国各地で市民ファンドによる発電事業が広がりを見せている。その大半は発電設備が運転を開始する前にファンドを募集する形で、運転を開始した後に実施するケースは珍しい。出資者にとっては発電量の実績に基づいて売電収入を評価できるメリットがある。トランスバリュー信託は12月中旬と1月中旬に東松島市内の4カ所で合計5回の説明会を開催する。

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