和田氏 水素ステーションの主要部品の1つである水素用ディスペンサーについて、価格低減の取り組みと今後の見込みについて教えてほしい。
能登谷氏 水素ステーションの建設コストの低減とともに、水素の価格そのものがガソリン車並みの値頃感にならないと、水素ステーションの普及は難しいと考えている。
現在のガソリンスタンドの建設費は約1億円。ガソリン計量機は仕様によって価格差があるものの、平均は1基当たり300万円程度である。それに対し、水素ステーションの場合でも建設費は4〜5億円。これは水素を外部から運び入れるオフサイト方式の場合だ。われわれの取り扱うディスペンサーは初期の価格が6000万円以上であった。
今後いくらになるかと問われると難しい。これまでは1台ずつ手作り、まさにハンドメイドだったものが、可能な限り仕様の統一化を図ることで、徐々に量産効果が出るようになってきた(図2)。生産性が上がっており、その意味で2020年には当初の3分の1となる2000万円を目指したいと考えている。
そのためには、われわれの努力だけではなく、規制緩和も必要だ。例えば、70MPaの仕様では特殊な材料を使用している。強度の安全率や水素脆性などのために通常の材料ではもたないためだ。
当社も規制緩和をにらみながら、(コスト低減を狙って)材料の置換などを進めている。ところが、規制緩和が進行中の局面において、数年分の部材を一気に作ってしまうということは考えにくい。これではコストは下がりにくい。
なお、製造方法にも改善の余地がある。従来のLPGやCNGの製造ラインを使うことや、操作パネルなどの部品の共用化により、できる限り現存のモノを活用し、コスト低減を図りたいと考えている。当然ながら設置コストだけではなく、ランニングコストも見ておくことが大切だ。
和田氏 規制緩和の話が出た。ディスペンサーに関して規制緩和の主な課題は何か。
能登谷氏 さまざまな規制全般にいえることだが、日本の規制は装置に関する安全係数が海外に比べて高い。例えば、ディスペンサーなどは総じて4倍以上が求められている。海外の2.5倍程度に対して、著しく安全率を高めに設定している。
例えば、FCVに水素を充填するカプラ(連結)部はとても重くて大きな構造となっている(図3)。テレビコマーシャルの影響もあってか、別名「ダンベル」とも呼ばれている。安全を担保することは最重要だ。だが、譲れるところは譲っていただく必要がある。カプラ部などは使い勝手も考えながら作っていくことが大切だと考えている。
和田氏 ディスペンサーの納期はどの程度なのか。
森泉氏 現在は受注から約7カ月を要している。大半は特殊材料の部品手配に費やす。納期が長いことはコストにも跳ね返っている。なお、ガソリン車用のディスペンサーの納期は約1カ月である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.