「瞬発力と持久力」の大規模蓄電システム、伊豆大島に導入蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2015年01月05日 14時30分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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蓄電池単体の改良とシステム力で実現

 実証試験に至るまで4年をかけて2つの技術開発を進めてきたという。まずは鉛蓄電池の改良だ。「高入出力・長寿命鉛蓄電池」と呼ぶ。新神戸電機が担当した。

 同社はLL1500-WSと呼ぶ風力発電所向けの新型鉛蓄電池を開発し、日立化成が2014年9月から販売を開始している。従来のLL1500-Wに比べて、最大放電電流を300A増やし、900Aとした製品だ(関連記事)。期待寿命が17年と長いため、風力発電所の出力変動緩和に向くという。

 実証試験に向けて開発した鉛蓄電池は最新型のLL-1500WSよりもさらに性能が高い。入出力の能力を1.7倍に拡張、寿命も1.2倍に伸ばす見通しを得たという。電池の構造や材料の改良を進めた他、運用時に定期的に実施するリフレッシュ充電の最適化によって実現する。

 もう1つの技術開発は、新型鉛蓄電池とリチウムイオンキャパシタを組み合わせて、最大の効果を発揮する「1.5MWハイブリッド大規模蓄電システム」としてまとめあげたこと。日立製作所が担当した。ピークシフトやピークカットといった、ある程度時間を掛けて対応する電力貯蔵には新型鉛蓄電池を使い、電圧や周波数の短期変動にはリチウムイオンキャパシタを利用する。「2つの『電池』は並列に接続されており、電流の入出力を制御プログラムによって最適化する」(日立製作所)。

 今後、約1年間の実証試験を通じて、開発した制御プログラムと蓄電システムを利用し、電力のピークシフトや変動抑制機能の他、システムの寿命も検証する。

5年間の研究開発でシステム構築に至る

 日立製作素と新神戸電機の取り組みは長期的なものであり、2014年に表面化した接続可能量問題と直接の関係はない。2011年度から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が助成を開始した「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」*3)の1事業として始まったものだ。

 同事業は2015年度に達成を目指す最終目標を3つ掲げている。そのうち、コストや寿命に関する目標はこうだ。「余剰電力貯蔵用として、2万円/kWh、寿命20年相当。短周期の周波数変動に対する調整用として、7万円/kW、寿命20年相当」。用途によって、容量単価と出力単価の目標を定めた。

 「当社と新神戸電機のシステムは余剰電力貯蔵用としても周波数変動用としても切り替えて利用できる。用途に応じて2つの目標のうち1つを達成可能だ」(日立製作所)。

*3) 同技術開発では系統安定化蓄電システムの開発として、日立グループ以外に3つの企業(グループ)が採択されている。サンケン電気(短周期周波数変動補償のためのネットワーク型フライホイール蓄電システムの開発)、NECとNECエナジーデバイス(大規模蓄電システムを想定したMn系リチウムイオン電池の安全・長寿命化基盤技術開発)、三菱重工業(低コスト・高性能リチウム二次電池を用いた大規模蓄電システムの研究開発)だ。いずれもNEDOの(費用)負担率は3分の2。日立グループは2011年度から2015年度まで、約10億円の助成を受けた。

【訂正】 記事の掲載当初、1ページ目本文8段落目で「リチウムイオンキャパシタの容量は15kWh、容量は0.5MWだ」としておりましたが、これは「リチウムイオンキャパシタの容量は15kWh、出力は0.5MWだ」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。(2015年1月6日)

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