このような目標を達成するための条件が3つある。太陽電池モジュールの変換効率と設備利用率、運転年数(寿命)だ。設備利用率は現在の12%よりも幾分高めの15%となっており、これは2020年、2030年とも変わらない。主な技術目標は変換効率と運転年数だ。
2020年の目標を達成するシステムでは、変換効率が22%と高い*3)。運転年数の目標は25年。2030年にはさらに条件が厳しくなり、モジュール変換効率は25%以上になる。これは現在大量に採用されている多結晶シリコン太陽電池モジュールでは実現できないだろう。運転年数30年も厳しい。パワーコンディショナーの長寿命化はもちろん、システム全体を効率よく保守管理する技術の導入が欠かせないだろう。
図1の「吹き出し」にある成果とは、NEDOが共同研究や委託事業の形で支援した企業や研究機関が開発したものだ。
*3) 現在、住宅用などに向けて量産が進んでいる太陽電池モジュールの変換効率は最大20%程度だ。例えば東芝の250W品(SPR-250NE-WHT-J)は20.1%、パナソニックの250W品(HIT 250α)の変換効率は19.5%である。
住宅用(消費側)のシナリオは図2だ。こちらは2015年以降に家庭用電力価格を下回った後、特段のコスト目標を示していない。太陽光発電システム単独の発電コストよりも、太陽光の欠点を補うための技術である蓄電や出力制御と組み合わせたときに、それでも家庭用電力価格以下にすることを目指しているからだ(関連記事)。
なお、住宅用のシナリオにおいても変換効率や運転年数の改善は必要だ。特に運転年数(寿命)の改善が効く。新ロードマップでは、調達価格等算定委員会(2014年度)の試算を引いて、このことを強調している。
寿命15年、変換効率14%、設備利用率12%の現状の場合、発電コストは36.6円/kWh。もしも寿命35年、変換効率20%、設備利用率13%が実現できたとすると、発電コストは3分の1以下の10.1円/kWhへと急激に下がる。
次回は発電コストを引き下げる取り組みについて紹介する。
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