LED照明の消費電力を70%削減、スマホで調光LED照明(1/2 ページ)

NTTファシリティーズは3社と共同でLED照明などを1灯ごと個別に調光制御できるシステム「FIT LC」を開発した。ユーザーはスマートフォンを使い、必要に応じて調光できる。既存のLED照明に小型の無線子機を取り付けることで導入でき、全メーカー品に対応することが特徴だ。

» 2015年01月09日 18時30分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 「導入済みの40灯のLED照明の消費電力を70%削減できた」(NTTファシリティーズ)。LEDランプの交換ではなく、後付けの制御システムを導入した結果だ。同社の研究開発本部がある新大橋ビル(江東区新大橋)の室内(150m2)での実績である。

「事務室における天井照明の適正照度は700lx(ルクス)だが、PCを使ったデスクワークなど作業によっては400〜500lxで十分だと分かった。加えて窓際では日照を利用することで、LED照明を抑えた」(同社)。必要な場所に必要な照度を提供し、快適性も失われていない。

 このような運用のためには、自在にLED照明を調光御するシステムが必要だ。同社が利用したのは、アイリスオーヤマ、メガチップス、日比谷総合設備と共同で開発した「FIT LC」と呼ぶ技術。スマートフォンなどから無線を利用して、LED照明などを1灯ごと個別に調光制御できるシステムだ。NTTファシリティーズは2015年1月5日にFIT LCの提供を開始している。

既存のLED照明に取り付け可能

 FIT LCの特徴は2つある。まずは、設置済みのLED照明に後から追加できること。小型のコントローラー子機を灯具に1つずつ取り付ける。無線技術を使うため、灯具ごとに配線を引く必要はない。座席レイアウトなどを変えた場合にも改修費用が発生しない。図1にシステム構成を示す。

 左端の一般的なスマートフォンを操作すると、Wi-FiまたはBluetooth経由で設定用タブレットに通信が伝わる。設定用タブレットを利用する理由は2つある。まずは、FIT LCが利用する920MHz帯の無線に信号を変換すること。もう1つは設定用タブレットを壁掛け式の操作画面として利用することだ。

 図1の右にあるコントローラー親機が設定用タブレットからの信号を受け取り、個別のLED照明に信号を送る。LED照明の灯具に配置した子機に信号が伝わり、調光する仕組みだ。

図1 FIT LCを適用したシステムの最大構成例(クリックで拡大) 出典:アイリスオーヤマ

 もう1つの特徴はLED照明灯具のメーカーを選ばないこと。多くのメーカーは、自社製品のラインアップとして照明制御システムを用意している。オフィスビルなどを新規に立ち上げる場合は問題になりにくいものの、既存の照明に後付けしようとすると高コストになる場合がある。複数メーカーの灯具を導入していた場合にも対応しにくい。

 FIT LCは、照明制御通信規格として国際標準化されたDALIを使っており、調光制御方式としてDALIまたは採用例が多いPWMに対応する。このためPWM制御方式の調光機能を採用していればメーカーを選ばない。「全メーカー製品に対応したといえる」(同社)。調光対応であれば、蛍光灯(Hf蛍光灯)にも適用できる。

オフィスの規模に応じてさまざまな使い方

 FIT LCの導入に不可欠なのは、設定用タブレットとコントローラー親機、コントローラー子機だけだ。「親機1台当たり、子機を64台まで制御できる」(NTTファシリティーズ)。小規模なオフィスであればこれで十分だろう。「1フロアに置く設定用タブレットの台数はユーザーの使い方やフロアの形状*1)などによって1台から複数台まで分かれる」(同社)。

 大規模なオフィスに向けた拡張も可能だ。図1の右端に描かれているゲートウェイを導入すると、その下に親機を8〜10台接続し、最大512台の子機を制御できるようになる。

 ゲートウェイには明るさセンサーや人感センサーを取り付けることができ、ユーザーが設定しなくても自動的に調光、消灯・点灯するシステムへと拡張できる。ゲートウェイにはBEMS(ビルエネルギー管理システム)と接続するためのインタフェース(BACnet対応)が備わっているため、入退出セキュリティシステムや(会議室)スケジュールシステムなどと連動することも可能だ。

*1) コントローラーから50m以内に子機や設定用タブレットを配置する必要がある。

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