日本最北のメガソーラー、雪に反射した太陽光で両面発電に挑む自然エネルギー

北海道の稚内市で積雪や寒さに負けない再生可能エネルギーの実証試験が始まる。運転中のメガソーラーに両面発電が可能な太陽光パネルを設置して、雪の反射を利用した発電に取り組む。さらに蓄電池や融雪マットを組み合わせて寒冷地ならではの再生可能エネルギーの活用方法を検証する。

» 2015年01月14日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 実証実験の場所は稚内市(わっかないし)が2011年から運営している「稚内メガソーラー発電所」である(図1)。北緯45度にある日本で最北端のメガソーラーで、14万平方メートルの敷地に約3万枚の太陽光パネルを設置して5MW(メガワット)の発電能力がある。

図1 「稚内メガソーラー発電所」の所在地(上)と太陽光パネルの設置状況(下)。出典:稚内市政策調整部

 積雪・寒冷・強風の中で再生可能エネルギーの導入可能性を検証するために、5種類の太陽光パネルを組み合わせて発電量の検証を継続中だ。太陽光パネルの設置角度も30度、33度、45度の3種類に分けている。過去4年間の実績を見ると、春から夏のピーク時に比べて、冬には5分の1以下の発電量に減少する(図2)。

図2 月別の発電量(単位:kWh)。出典:稚内市政策調整部

 こうした積雪寒冷地の再生可能エネルギーを最大限に活用するための実証試験が1月中に始まる。北海道庁からの委託を受けた民間企業3社が共同で取り組むプロジェクトで、雪の反射を利用した両面発電などの有効性を2017年度末まで3年間かけて検証する予定だ。実証試験のシステムは「創エネ」「蓄エネ」「賢エネ」の3つの分野で構成する(図3)。

図3 実証試験で導入するシステムの概要。出典:PVG Solutions

 創エネでは両面発電型の太陽光パネル2枚を発電所の一部に設置する。1枚あたりの発電能力は表面の260ワットに加えて、裏面でも10〜30%(平均50ワット程度)の発電が可能だ。積雪のない時期には地域の海産物であるホタテの貝殻を地面に散布して同様の効果を狙う。

 このほかに蓄エネでは鉛電池とリチウムイオン電池の2種類を組み合わせた「Bind Battery」を導入する。鉛電池は低出力ながらコストが安く、一方のリチウムイオン電池は高出力ながら低温で使うとトラブルが起きやすい欠点がある。

 実証試験では通常時はリチウムイオン電池を使いながら、低温時には鉛電池に切り替えて耐寒性を検証する。すでに発電所には大容量のNAS(ナトリウム硫黄)電池が導入されているため、3種類の蓄電池の比較も可能になる。

 発電・蓄電した電力は融雪に利用する。導電性の高いカーボンナノチューブをコーティングしたマットを発電所の敷地内に設置して融雪状況を調べる。このマットは通常のニクロム線を使ったヒーターと比べて発熱量が均一になり、20%以上の省エネ効果が期待できる。

 北海道庁は実証試験の成果を生かして、道内の積雪寒冷地に再生可能エネルギーを活用したスマートシティの構築を推進していく計画だ。両面発電が可能な太陽光パネルと融雪マットを組み合わせた実証試験は旭川市でも2013年12月から開始している。

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