下水と燃料電池の組み合わせ、新電力に高く売電自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2015年02月10日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
前のページへ 1|2       

熱も回収して利用

 燃料電池は効率が高いものの、もともと消化ガスが持っていた化学エネルギーのうち、6割程度が電力ではなく、熱に変わってしまう。この熱も無駄にしない。

 「高温水」の形で設備から熱を取り出して利用する設計を採った。熱交換器や消化ガスを用いた温水ヒーターに高温水を通じてさらに温度を高め、汚泥消化槽の加温に用いる(図4)。いわゆるコージェネレーションシステムである。

図4 浄化センターの設備と導入した消化ガス発電設備(赤枠)の関係 出典:メタウォーター

固定価格買取制度が状況を変えた

 太陽光発電の普及には固定価格買取制度が大きな影響を与えた。松本市の浄化センターの計画を見ると、消化ガスの利用においても強い影響があったことが分かる。

 松本市には主要な浄化センターが2カ所ある。今回の両島浄化センターと宮渕浄化センター(松本市宮渕本村)だ。「汚泥消化槽を備えている浄化センターは市内でこの2カ所だけだ」(上下水道局)。消化ガスの利用では宮渕浄化センターが先行した。2012年にはマイクロガスタービン(出力95kW×2基)を設置した消化ガス発電設備の設計が始まり、2013年に起動。「宮渕では売電をしておらず、センター内で全ての電力を消費している」(上下水道局)。センターの年間消費電力量630万kWhのうち、23.8%に当たる150万kWhを発電可能だ。

 その後、2012年に固定価格買取制度が始まり、現在と同じ39円(税別)という買取価格も決定した。両島浄化センターの事例では、民間業者の技術やノウハウを生かすために設計施工を一括発注できるプロポーザル方式を採用、2013年9月にはメタウォーターが設備建設工事を4億1790万円で受注している。

 事業費4億4000万円との差額が生じた理由は、経済産業省の政策にあった。松本市が事業計画を進める中、同省が制度を変更し、設備の一般的な認定範囲を変更した。その結果、消化槽を動かす電力を消化ガス発電で賄うことが必要になり、消化槽の電気配線や制御盤などの工事費用が加わった。

【訂正】 記事の掲載当初、1ページ目第2段落で「エナリスに販売する」としておりましたが、これは「エネットに販売する」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.