不動産会社の大京は4月以降に着工するマンションの全物件に、自然エネルギーを取り入れた「パッシブデザイン」を採用する。換気機能付きの玄関ドアやグリーンカーテンなどを備えて、室内の温度上昇を抑える狙いだ。夏の冷房にかかる電気代を3割も削減する効果がある。
大京は自然エネルギーを活用する建築手法を「ライオンズパッシブデザイン」と呼ぶ自社の基準にして、2015年4月以降に着工する新築マンションに標準で採用することを決めた。パッシブデザインは太陽や風による自然エネルギーをそのまま生かして室内の気温や湿度を調整する手法である。
大京は2009年に横浜市のマンションでパッシブデザインの実証を開始して、これまでに合計4棟のマンションに同様のデザインを採用して検証を続けてきた(図1)。
2013年の夏に東京都内のマンションを使って分析したところ、通風と遮熱で室温の上昇を抑える効果があり、冷房にかかる電気代を大幅に削減できることがわかった。導入した装備は5種類ある(図2)。換気機能が付いた玄関ドアなど通風効果を高めるものが4種類で、残る1つは遮熱効果を発揮するグリーンカーテンである。
このようなパッシブデザインを施した南向きの3LDKの住戸を対象に、3人家族が生活する条件を設定して解析した。その結果、7月下旬のピーク時には室温が4.9度も低くなることを確認できた(図3)。
夏期の6月〜9月の4カ月間を対象に、室温27度・湿度60%の状態を保つようにエアコンを稼働させると、冷房にかかる電気代が4カ月間の合計で通常(非パッシブ)の場合の1万894円から7504円に下がる(図4)。パッシブ手法の効果で3390円も安くなり、削減率は31%になった。
大京は検証結果をもとに、窓にも遮熱効果の高いエコガラスを加えて独自のパッシブデザインを設定した。4種類の通風機能と2種類の遮熱機能を合わせて、住宅性能表示制度の省エネルギー対策では最高ランクの等級4に準拠する。
自然エネルギーを生かしたパッシブデザインは、エネルギー消費量を実質的にゼロにする「ネット・ゼロ・エネルギー」の建物に標準的に導入されている。LED照明や太陽光発電などと組み合わせれば、光熱費をゼロ以下に抑えることも可能になる。
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