石炭火力と風力・地熱に1168億円、J-Powerが発電設備を増強電力供給サービス

電力会社に匹敵する規模の発電設備を運営するJ-Powerが発電所の新設に1168億円を投資する計画だ。小売の全面自由化に伴って増大する電力供給ニーズに対応するため、発電コストが安い高効率の石炭火力発電に重点配分する。風力と地熱でも合計4カ所に189億円を投入する。

» 2015年02月19日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 現時点で国内に200万kWを超える規模の発電設備を運転している事業者は電力会社を除くとJ-Power(電源開発)だけである。J-Powerは新たに1168億円の資金を投入して8つの発電所の建設計画を推進する(図1)。8カ所のうち7カ所が国内で、2016年4月に始まる小売全面自由化に向けて発電事業のコスト競争力を高める狙いだ。

図1 J-Powerが投資する発電所の新設計画。出典:J-POWER

 1168億円のうち約半分の579億円を広島県の「竹原火力発電所」に建設中の新1号機に振り向ける。J-Powerの主力の発電所の1つで、老朽化した2基の石炭火力発電設備を最新鋭の1基に更新する計画だ(図2)。60万kWの発電能力で2020年9月に運転を開始する予定になっている。

図2 「竹原火力発電所」の全景と新1号機(右側)の完成イメージ。出典:J-POWER

 次いで195億円を投入するのが同じ広島県で建設中の「酸素吹IGCC実証試験発電所」である(図3)。現在の石炭火力で最高の効率を発揮するIGCC(石炭ガス化複合発電、Integrated coal Gasification Combined Cycle)の中でも、排気ガスが少ない酸素吹き方式を採用する。中国電力と共同で設立した大崎クールジェンが2017年3月に運転を開始する見通しだ。

図3 「酸素吹IGCC実証試験発電所」の完成イメージ。出典:大崎クールジェン

 石炭火力に加えて、再生可能エネルギーにも資金を振り向ける。青森・秋田・愛媛の3県に建設する風力発電所のほか、秋田県の湯沢市で計画中の「山葵沢(わさびさわ)地熱発電所」が対象に含まれている(図4)。風力と地熱を合わせた4つのプロジェクトに合計で189億円を投資する。

図4 「山葵沢地熱発電所」の完成イメージ。出典:湯沢地熱

 J-Powerは石炭火力と水力を中心に全国各地で大規模な発電設備を運転している。政府の方針では安価な電力を安定して供給できる「ベースロード電源」として、原子力・石炭火力・水力・地熱の4種類を一定の割合で確保する考えだ。このうち原子力は可能な限り低減する方針であることから、J-Powerは将来に向けて石炭火力の事業機会が拡大すると判断した。

 8カ所の発電所を新設するのと並行して、既設の7カ所の石炭火力発電所の更新や改良にも163億円を投資する。新設分と既設分を合わせて総額1331億円の資金を新株の発行などを通じて3月中に調達する予定だ。青森県で建設途上にある「大間原子力発電所」は今回の投資対象には入っていない。

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