太陽光発電で怖い「アーク放電」、0.25秒で検出・遮断して発電は継続蓄電・発電機器(1/2 ページ)

三菱電機は2015年2月、太陽光発電システムで発生するアーク放電事故を0.25秒以下で検出、遮断できる技術を開発したと発表した。従来よりも8倍程度高速だ。遮断したとしても健全な回路を使って発電を継続できるという特徴がある。

» 2015年02月20日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 太陽光発電システムで故障した部分だけを素早く特定、分離し、事故を防ぐ技術を三菱電機が開発した。故障していない部分はそのまま運転できるため、発電量の低下を最小限に抑制できる。

 同社が2015年2月17日に発表したのは、異常な放電(アーク)が発生したときに、検出し、選択的に遮断する技術。太陽光発電システムのストリング単位で動作し、世界初をうたう。「直流のアークを素早く検出する製品は国内にはなく、欧米でも家庭向けの小規模な製品しかない。欧米の製品はシステム全体を停止する。当社が開発した技術は、アークが発生した部分だけを遮断できるという特徴がある」(三菱電機)。

 アークとは、直流電流が流れている回路で起こる放電現象。切断された電線やスイッチ部分で起こる。強い発光を伴うほか、放電している部分の温度は数千度にも達する。なるべく早くアークを検出し、抑制する必要がある。

検出と遮断の両方に特徴あり

 新技術を太陽光発電システムに適用した場合のシステム構成を図1に示す。

 図1の中央右に描かれたストリングでアークが発生したとしよう。すると、接続箱に収められた「DCアーク検出器」が短時間でアークの発生を検知、「DC開閉器」に信号を送り、問題のストリングを切り離す。

図1 アーク放電と検出、遮断 出典:三菱電機

 このように今回の技術は検出と遮断の2段階からなる。遮断部分は同社が一部製品化を進めている。検出部分は今回が初めて発表した技術だ。

 発生したアークに対処する従来の技術と、今回の技術の違いは大きく3つある。第1と第2の違いは既に紹介した通り。検出だけだった機能が、検出と遮断に変わった。もう1つはシステム全体を停止する対応から、回路を選択して遮断できるようになった点だ。

0.25秒以下で対応可能に

 第3の特徴は対応に必要な時間が約8分の1に短くなったこと。従来技術はアークの誤検出を防ぐために判定時間が長く、遮断と合わせて約2秒を要していた。新技術では判断アルゴリズムを開発、適用した結果、検出・遮断を合わせても0.25秒以下で完了できる。その手法の内容はこうだ。「いままでのアーク検出では高周波成分、つまりノイズだけを見ていた。今回の技術ではストリングの『I-V特性(電流-電圧特性)』を記録しておき、そこから逸脱したI-V関係があったときにアークが発生したと判断している。これで検出を高速化できた」(三菱電機)。特性曲線からのずれをみているため、見極めの品質が高いのだという。

 対応する時間を短縮する意味は大きい。アーク放電は高熱を発するため、継続すると故障範囲が拡大してしまう。新技術によって、拡大を防止できる。

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