LPガスの最大手も電力小売に、自由料金でセット販売を開始電力供給サービス

「プロパンガス」で知られるLPガスの市場で最大手のアストモスエネルギーが電力の小売を開始した。東京電力の管内でLPガスを利用中の企業や自治体を中心にセット料金で販売する。LPガスの市場は自由化されているため、2016年4月から家庭向けでも電力とセット販売が可能になる。

» 2015年02月23日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 LP(液化石油)ガスはボンベに詰めて供給する方式で、現在でも都市ガスの配管がない地域を中心に広く使われている(図1)。東日本大震災では電力や都市ガスよりも災害に強いことが実証されて注目を集めた。

図1 LPガスと都市ガスの違い。出典:日本LPガス協会

 国内には2万社を超える事業者がひしめき合う状況だが、その中で約2割のシェアを握るのが最大手のアストモスエネルギーだ。石油大手の出光興産と三菱商事が2006年に設立したLPガスの輸入・販売会社である。

 アストモスエネルギーは2月1日から東京電力の管内で電力の小売を開始した。系列の特約店を通じて、LPガスとセット料金で販売する。当面はLPガスを利用中の企業や自治体を対象にするが、電力の需給管理機能を強化しながら供給エリアと販売先を拡大していく方針だ。

 LPガスは電力と都市ガスに押されて販売量が減少傾向にある。家庭や企業などのエネルギー需要のうち、LPガスの占める割合は1割弱にとどまる(図2)。電力と都市ガスの小売全面自由化が目前に迫る中で、LPガス事業者は電力と組み合わせたセット料金で巻き返しを狙う。

図2 民生部門のエネルギー需要の構成比。出典:日本LPガス協会

 すでにLPガスの市場は自由化されていて、家庭を含めて自由料金で販売できる状態にある。2016年4月に電力の小売全面自由化が始まれば、家庭にもセット料金で販売できる。都市ガスは2017年4月に小売全面自由化を実施する予定で、LPガスよりも1年遅れて電力とセット販売が可能になる。

 LPガスの需要家は全国で約2400万にのぼり、都市ガスの約2900万と比べても見劣りしない規模の顧客を抱えている(図3)。電力とLPガスを安い価格でセット販売できれば、電力事業を拡大できる余地は大きい。

図3 ガス事業者の状況(2013年3月時点)。出典:資源エネルギー庁

 対する電力会社はLPガスの供給体制を構築することが難しく、LPガスの市場には参入しにくい状況にある。電力会社とLPガス会社が提携する可能性もあり、業界の垣根を越えた再編の動きがますます活発になっていく。

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