発送電分離を2020年4月に実施、電力とガスの市場構造が変わる法制度・規制(2/2 ページ)

» 2015年03月04日 13時30分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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「ガス導管分離」で電力会社にメリット

 小売全面自由化に伴ってガス事業者の区分も変わる。電力と同じように、発電事業に相当する「LNG(液化天然ガス)基地事業」は届出制、送配電事業に相当する「導管事業」は許可制になる(図4)。

図4 ガスの小売全面自由化に伴う事業者の区分変更。出典:資源エネルギー庁

 現時点で国内には200社を超える「一般ガス事業者」(電力会社に相当)が導管を運営して都市ガスを販売している(図5)。一般ガス事業者は2017年4月から3つの区分に分かれる。さらに全国の導管の約5割を保有している東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの大手3社を対象に、発送電分離と同様の「ガス導管分離」を実施することも決まった。

図5 都市ガス事業の現状。出典:資源エネルギー庁

 実際のところLNGの輸入量の半分以上は電力会社が発電用に調達していて、LNG基地も多く保有している。電力会社をはじめガスの小売事業者がLNGを顧客に直接販売するにあたって、都市ガス会社の小売部門と同等の条件で導管を利用できるようにする必要がある(図6)。ガス導管分離は発送電分離から2年後の2022年4月に実施する予定だ。

図6 ガス導管分離(導管部門の中立化)の実施イメージ。出典:資源エネルギー庁

 電力と都市ガスのほかに、地域を限定した熱供給事業も2016年4月に料金の規制を撤廃する。電力・ガス・熱を加えたエネルギー市場の自由化に向けて、各事業者による取引状況などを監視するための新しい規制組織を2015年内に設置することが決まっている(図7)。「電力・ガス取引監視等委員会」の名称で、有識者によって構成する独立の委員会である。

図7 電力・都市ガス・熱供給を含むエネルギー分野の改革スケジュール。出典:資源エネルギー庁

 この委員会は小売の分野だけではなくて、送配電事業とガス導管事業の中立性も監視する。経済産業大臣に直属する組織で、事業者に対して業務改善勧告などを発することができる強い権限を持つ。市場の健全な発展のためには、委員会の独立性が極めて重要になる。

 今回の法案には気になる附則が設けられた。小売全面自由化を実施する前のタイミングと、発送電分離を実施する前後の合計3回にわたって、市場の状況を検証する規定が加えられている(図8)。必要に応じて現在の電力会社を保護するための対策をとれるような表現が盛り込まれている。同様の附則はガス事業法にも入るが、内容はシンプルで、電気事業法の附則にあるような具体的な表現は見あたらない。

図8 電力システム改革の実施状況に関する検証。出典:資源エネルギー庁

 検証結果に基づく措置は経済産業大臣が決定するほか、監視委員会の委員を任命する権限も経済産業大臣にある。電力システム改革が予定通りに進むかどうかは、結局のところ政府の判断次第である。電力会社ではなく利用者の利益を最優先に改革を断行することが求められる。

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