2段階で進める独立「水素」電源、コンテナで自由に輸送蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2015年03月05日 12時30分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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蓄電池を併用する理由とは

 残りの1つのコンテナの内部はほぼ3等分されている。図3の左からまず水電解水素製造装置ユニット、次に燃料電池ユニットと貯湯タンク、最後にリチウムイオン蓄電池ユニットだ。

 コンテナ上部にある太陽電池モジュールの出力は合計30kW*2)。この電力をリチウムイオン蓄電池ユニットと水電解水素製造装置ユニットに送る。リチウムイオン蓄電池を併用する理由は、外部に接続した電力負荷の上昇に追従しやすくするためだ。燃料電池は化学反応によって電力を作り出すために、素早い追従には向いていない(図4)。

 このような制御を行うのが、蓄電池ユニットと並べて置く電力マネジメント装置だ。電力マネジメント装置は、外部の電力や温水、水素の使用量、貯蔵用を監視し、電気料金を削減できるよう最適制御運転を行う。

*2) 実際に設置する際は、太陽電池モジュールをコンテナ上部以外の場所に置くという。

図4 H2Oneの動作(クリックで拡大)

 水電解水素製造ユニットは、外部から取り入れた水道水から、酸素と1時間当たり1Nm3(1気圧、0度換算)の水素を作り出す。その後、水素を水素貯蔵タンクに送る。必要に応じてタンクから水素を取り出し、5基の燃料電池ユニットで電力と温水を作り出す。5基の合計最大出力は3.5kWだ。リチウムイオン蓄電池と合わせると最大出力は30kWとなる。

 温水はコンテナ内の貯蔵タンクに蓄えられ、1時間当たり75L供給できる。川崎マリエンにはテニスコートなどがあるため、通常時はシャワー用に温水を利用する。

より大型の1万世帯向け設備も計画

 同社がH2Oneと合わせて展示したのはさらに大型の計画であるH2Omega(図5)。自社の固体酸化物形電解セルを導入してより高い効率も狙う。「当社のコア技術は3つある。水電解、燃料電池(関連記事)、蓄電池(SCiB)だ。H2Omegaでは3つとも自社技術で賄う」(東芝)*3)

*3) 2015年4月に完成を予定するH2Oneでは水電解ユニットについて、どの技術を利用するのか公開していない。他社と協力すると考えられる。

図5 H2Omegaの外観(クリックで拡大)

 出力は4MW、32MWhもの電力を貯蔵できる(図6)。これは1万世帯が8時間使用可能な電力量だ。図5の手前にあるH2Oneと比較すると大型の設備であることが分かる。

図6 H2Omegaの能力と動作

 H2Omegaの優位性は4つあるという。第1に既存の(リチウムイオン)蓄電池と比較して安価なシステムを作り上げることができること。第2に長期間の電力貯蔵が可能なこと。第3に水素貯蔵タンクを増設することで電力貯蔵量を増やすことができることだ。増設コストは蓄電池よりも低い。第4に総合効率が高いこと。水から水素を生成する固体酸化物形電解セルと、水素から電力を作り出す固体酸化物形燃料電池を組み合わせたため、充放電効率として80%を目標にできるという。

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