日本の海洋エネルギーの開発で最も進んでいる久米島の海洋温度差発電が次のフェーズへ向かう。発電効率の向上とコストの低下が大きな課題で、2015年度から2年間で新たな技術開発を進める計画だ。既存の実証試験設備の成果をもとに、1MW級の商用プラントを実現させる方法を開発する。
久米島では海洋深層水を特産品にして産業を活性化させる取り組みを推進している。その一環で温度の高い表層水と組み合わせた温度差発電の実証事業を2012年度に開始した。まもなく3年間の事業期間が終了するため、2015年度から2年間のプロジェクトで技術開発を継続する(図1)。
実証プロジェクトの場所は「沖縄県海洋深層水研究所」の中にある。2013年4月には発電能力50kWの実証試験設備が運転を開始して、海洋温度差発電の中核技術である熱サイクルの効率や熱交換器の性能を中心に検証を進めてきた(図2)。
海洋温度差発電は30度近い表層水を使って、沸点の低い媒体を蒸発させてタービン発電機を回転させる。発電後の媒体を液体に戻して再利用するために、温度が5度前後の深層水で冷却する仕組みだ。表層水と深層水を組み合わせて熱を効率よく循環させることが発電性能とコストの決め手になる。
2015年度から取り組むプロジェクトでは、発電効率を向上させるための技術開発に加えて、発電後の深層水を利用したコスト削減の手段を明確にすることが求められる。沖縄県は実証試験を担う事業者を3月中に決めて、4月から2年間のプロジェクトを開始する方針だ。初年度の予算は約1200万円を見込んでいる。
海洋温度差発電を実用化するにあたっては、発電能力が1MW(メガワット)級の商用プラントを建設する手法を確立する必要がある。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)によると、海洋温度差発電で1MWのプラントでは発電コストが1kWhあたり40〜60円になる(図3)。この発電コストをどれだけ低減できるかで、商用プラントの実現性が変わってくる。
日本の沿岸では四国から九州の太平洋側と沖縄諸島が海洋温度差発電に適している(図4)。海面に近い表層水の温度が年間を通じて25度前後になることが必要で、久米島の周辺海域は条件に合致している。久米島の実証試験の成果は四国や九州でも生かすことができる。
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