島のエネルギーをCO2フリーに、石油から太陽光・風力・バイオマスへエネルギー列島2014年版(47)沖縄(2/2 ページ)

» 2015年03月17日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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下水処理場でバイオマス発電が拡大

 沖縄県では年間の日射量は意外に少なくて、全国平均を下回る。それに対して年間の平均風速は毎秒6メートルを超える場所が多く、太陽光よりも風力発電が適している。ただし夏には台風が数多く襲来して強風が吹くために、風車を破損させてしまう可能性が大いにある。

 そこで離島の風力発電設備には、必要に応じて風車を地面に倒せる「可倒式」が有効だ。沖縄電力が3つの島に合計5基の可倒式風車を設置して、離島の再生可能エネルギーを拡大している。最も新しい可倒式の風力発電設備は沖縄本島から西へ50キロメートルの場所にある粟国島(あぐにじま)で2014年6月に運転を開始した(図4)。

図4 「粟国可倒式風力発電設備」の全景(左)と風車傾倒時(右)。出典:沖縄電力

 沖縄県では離島を含めて風力発電の導入量が増えてきたが、県内の風力発電所の大半は沖縄電力が運営している。このため固定価格買取制度による風力の導入量はほとんどなく、最近では太陽光のほかにバイオマスが増え始めている(図5)。

図5 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)
図6 沖縄県の下水処理場。出典:沖縄県土木建築部

 特に活発になってきたのが、下水処理場で発生する消化ガスを利用したバイオマス発電だ。沖縄本島では9カ所の下水処理場が地域ごとに下水を処理している(図6)。

 このうち処理量が最大の「那覇浄化センター」では1984年から消化ガスによるバイオマス発電を続けてきた。年間の発電量は720万kWhにのぼり、浄化センターで使用する電力の3分の1を自給自足することができる。

 新たに「宜野湾(ぎのわん)浄化センター」と「具志川(ぐしかわ)浄化センター」でも消化ガスを利用できる発電設備を導入する計画だ(図7)。2カ所を合わせると年間の発電量は830万kWhになる見込みで、一般家庭の2300世帯分の電力に相当する。それぞれの発電設備は2016年に運転を開始する予定である。

図7 「宜野湾浄化センター」(左)、「具志川浄化センター」(右)。出典:沖縄県土木建築部

 沖縄県は浄化センターの土地を発電事業者に貸し付けて、発電用に消化ガスを売却する。県みずから投資せずに再生可能エネルギーを拡大できるうえに、土地の貸付料と消化ガスの売却収入を得ることができる。消化ガスは生物由来のバイオ燃料であり、CO2排出量の削減にもつながる。

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −九州編 Part2−」をダウンロード

2016年版(47)沖縄:「台風に負けない風力発電に挑戦、バイオマスで島のCO2を減らす」

2015年版(47)沖縄:「小さな離島で再生可能エネルギー7割へ、台風を避けながら風力発電と太陽光を」

2013年版(47)沖縄:「海洋温度差で未来をひらく、離島の自給率100%へ太陽光と風力も加速」

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