データセンタが環境に役立つ、邪魔な排熱を都市空調に利用スマートファクトリ(2/2 ページ)

» 2015年03月18日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
前のページへ 1|2       

PUEや再生エネ利用率を越えて進む

 EcoDataCenterのPUEの値は、1.15未満であり比較的性能が高い。消費電力18MWの全てを再生可能エネルギーで賄う。このため、LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)プラチナ認証も受けている*2)

 近隣で調達できる再生可能エネルギー由来の電力は、全消費電力の約50%。市の近郊にある風力発電所の他、ファールン川の水を使う水力発電所、隣接する二次バイオマス発電所から得る。ここでいう二次バイオマスとは林業*3)で発生するウッドチップや樹皮、おがくずなどの未利用資源や、住宅が排出する可燃性の生物由来のゴミをいう。残りの半分はスウェーデンで最大の太陽光発電所などから調達する。

*2) 米国グリーンビルディング協会(USGBC:U.S. Green Building Council)が開発、運営している建築物に対する環境対応評価。「エネルギーと大気」の他、「サステイナブルな敷地」や「水効率」など5つの評価項目がある。
*3) スウェーデンは林業が盛んであり、製材の生産規模は世界第7位。パルプは世界第5位。

図3 ファールン市と建設予定地(図中左)の位置関係 出典:EcoDataCenter

 最大の特徴は、データセンターの排熱をファールン市の地域冷暖房システムと接続する予定であること(図3)。一般的なデータセンターは排熱を利用することなく大気中に放出している。EcoDataCenterは違う。データセンター内のサーバやIT機器が発する大量の排熱を地域のビル暖房に生かす。ファールン市の年間平均気温は5度。暖房が活躍しそうだ。

 逆に夏季には地域の発電所が生み出した余剰の蒸気でデータセンターの冷却装置を動かす。同市の最高気温が25度を超える日は、平均して年間22日だという。なお、データセンターの屋根には植物を配置して、日照の影響を和らげる。

 データセンターと都市が相互に排熱を融通するため、EcoDataCenterはファールン市内に立ち上げる。図4には、木質バイオマスを利用し、市内の78%の住宅に温水を供給するファールン市のコージェネ発電所(図左下、出力8.7MW)とEcoDataCenter(左上)の配置を示した。EcoDataCenterの敷地面積は2万3250m2。3棟の設備からなり、2016年第1四半期にはそのうち1棟が完成する予定だ。

図4 EcoDataCenterの立地 左上の3つの建物からなる(クリックで拡大) 出典:シュナイダーエレクトリック

スマホが身近になると消費電力が増える

 EcoDataCenterによれば、全世界には合計300万のデータセンターがあり、消費電力は、全電力の約1割に相当する。この状況はさらに加速する。例えば世界各国でスマートフォンが普及すると、それだけデータセンターの消費電力が増えるからだ。例えば標準的なスマートフォンの年間消費電力量は、そのスマートフォンが利用しているデータセンターのサービスを含めると、標準的な冷蔵庫よりも多くなるのだという*4)

 住宅の利用する全エネルギーのうち熱の占める比率は意外に高い。これはスウェーデンだけではなく、日本にも当てはまる。エネルギー白書2013年によれば、住宅のエネルギー消費の28%が給湯用、27%が暖房用である。EcoDataCenterのようにさまざまな排熱を有効利用する取り組みは、日本国内でも有効だろう(関連記事1関連記事2)。

*4) EcoDataCenterは、例えば冷蔵庫の345kWh/年に対して、スマートフォンは420kWh/年といった数字を挙げている。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.