風力発電の「戦略的適地」が国内4カ所に、最大500MW級を洋上に展開自然エネルギー(1/2 ページ)

地域主導による風力発電を推進するため、環境省は2015年度から「戦略的適地」の開発支援に乗り出す。岩手・鳥取・福岡・長崎の4県で構想中のプロジェクトを対象に、環境に配慮した風力発電事業のモデルを構築する。福岡県と長崎県では洋上に100基を超える大型風車を展開する計画だ。

» 2015年03月19日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 環境省は風力発電を対象にした「地域主導型の戦略的適地抽出手法」の構築事業を2015年度に開始する。全国からモデル地域を選び、2016年度までの2年間で環境影響評価の第1段階まで実施できるようにする方針だ。2015年度は1億5800万円の予算を見込んでいて、1地域あたり4500万円までを補助する。

 公募の結果、4カ所をモデル地域に選定した(図1)。岩手県の太平洋沿岸で最北端にある洋野町(ひろのちょう)のほか、福岡県の北九州市で「地域エネルギー拠点化推進事業」を進めている響灘(ひびきなだ)の沖合、すでに浮体式の洋上風力発電の実証試験が始まっている長崎県の五島市が含まれている。鳥取県で風力発電が盛んな北栄町(ほくえいちょう)のプロジェクトだけは陸上で実施する。

図1 「戦略的適地抽出手法」を構築するモデル地域。出典:環境省

 岩手県の洋野町は東日本大震災で甚大な被害を受けた地域で、復興に向けて2014年度から7年計画で再生可能エネルギーの導入を推進している(図2)。町の北側にある角浜(かどのはま)漁港の沖合を対象にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2011年度に事業化の調査を実施したところ、発電能力が2MW(メガワット)の風車を40基ほど着床式で設置できることが確認できた。

図2 洋野町の再生可能エネルギー導入状況(2014年3月時点)。出典:洋野町
図3 洋野町の平均風速(地上70メートル)。出典:洋野町(NEDOの資料をもとに作成)

 洋野町は風況に恵まれていて、陸上・洋上ともに年間の平均風速が毎秒7メートル以上になる(図3)。

 NEDOの調査では洋上風力発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)として24%を見込むことができて、しかも動植物や漁業に対する影響は軽微と評価した。環境省のモデル地域に選ばれたことで、早ければ3年後の2018年度にも着工できる可能性がある。

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