太陽光発電の壮大な実験場、南アルプスのふもとで52種類の製品を比較蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2015年03月23日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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ロボットで急斜面に施工する新工法も

 4つのテーマで進める実証プロジェクトと並行して、近隣の道路に面した急斜面にも太陽電池を設置して実証研究を開始する。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2014年度から3カ年計画で推進する「太陽光発電多用途化実証プロジェクト」の一環で、NTTファシリティーズが工作機械メーカーのアドテック富士と共同で取り組んでいる。

 NEDOの実証プロジェクトでは、太陽光発電を導入できる可能性が大きいものの建設が難しい場所を対象にする。そのうちの1つが道路脇などに多い傾斜地だ。NTTファシリティーズのリサーチパークに隣接して走る道路にも40度の傾斜地がある。この急斜面を利用して3通りの施工方法で太陽電池を設置した(図5)。平面に設置する場合と同等のコストに低減することがプロジェクトの目標である。

図5 道路脇の急斜面に設置した太陽電池。出典:NTTファシリティーズ

 新たに開発した3通りの方法は、いずれも重機を使わずに斜面に架台を設置することができる。1つ目の施工方法は「埋込型」で、通常よりも小型の基礎を造る(図6左)。人力で基礎を斜面に埋め込んだ後に、支柱を立ててモルタルで固定する工法である。

図6 「埋込型」(左)と「アジャスト型」(右)の架台に太陽電池を設置。出典:NTTファシリティーズ

 2つ目は「アジャスト型」と呼ぶ工法で、斜面の上端で架台を組み立ててから支柱の高さを調整する(図6右)。架台を設置した後に、ロボット(自動施工装置)を使って太陽電池をスライドさせながら設置する点が特徴だ。人間が傾斜地に立ち入らなくても設置作業を完了することができる。

 さらに設置作業を軽減する3つ目の方法が「シート型」の太陽電池である(図7)。薄膜タイプの薄くて軽い太陽電池を市販の防草シートと一体化した。このシート型の太陽電池をピンで地面に固定するだけだ。設置場所をコンクリートなどで造成しない方法だと雑草の除去が必要になるが、防草シートを組み合わせることで解決する。

図7 「シート型」の太陽電池。出典:NTTファシリティーズ

 NTTファシリティーズは平地と傾斜地の2カ所の実証設備の検証結果を2015年度中にまとめて今後のプロジェクトに生かす。その後も自社で構築・運営するFソーラーリサーチパークは継続する方針で、第3期の実証設備を2016年度までに完成させる。

 第3期には発電規模を5倍以上の2MW(メガワット)に拡大して、メガソーラー級の実証設備に発展させる計画だ。太陽光発電の施工コストと発電効率の改善を続けながら導入プロジェクトの拡大につなげていく。

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