消化ガス発電が北海道にも広がる、固定価格買取制度で初めて自然エネルギー

下水処理場で発生する消化ガスを利用した発電事業が全国各地で活発になっている。北海道では固定価格買取制度の認定を受けた初めてのプロジェクトが室蘭市で始まる。民間企業の資金とノウハウを活用したPFI方式で2016年4月に発電を開始する予定だ。将来は水素エネルギーも展開する。

» 2015年03月25日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 消化ガス発電に取り組むのは室蘭市が運営する「蘭東下水処理場」である。室蘭市で唯一の下水処理場で、市内の下水をすべて浄化している。これまで下水の処理工程で発生する消化ガスは施設内の暖房などに利用してきたが、新たに発電設備を導入して電力の供給を開始する(図1)。

図1 「蘭東下水処理場」の消化ガス発電事業。出典:月島機械

 発電設備はガスエンジン方式で103kWの発電能力がある。年間の発電量は42万kWhになり、一般家庭で120世帯分の使用量に相当する。運転開始は2016年4月の予定だ。すでに2015年2月に固定価格買取制度の認定を受けて、20年間の売電が可能になっている。消化ガスによる発電設備では北海道で初めてのケースになる。

 この事業は自治体の負担が軽いPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)方式で実施する。PFIは公共施設の建設・運営を民間企業に委託する仕組みで、自治体は初期投資なしで事業に参画することができる。室蘭市は3月19日に発電事業者の月島機械と消化ガスの売買契約を結んだ(図2)。

図2 PFI方式による事業スキーム。出典:月島機械

 室蘭市は消化ガスと土地を提供して、月島機械が消化ガスや土地の使用料を支払うスキームである。月島機械は発電した電力を固定価格買取制度で電力会社に売電する。消化ガスのようなバイオマス由来のガスで発電した電力は買取価格が1kWhあたり39円(税抜き)で、年間の売電収入は約1600万円になる見通しだ。

 室蘭市は地域経済の活性化と災害時の防災機能強化を図るために、2015年2月から「室蘭グリーンエネルギータウン構想」に乗り出した。地域の資源を生かして再生可能エネルギーと水素エネルギーを2020年度までに倍増させる目標だ(図3)。その中で新たにバイオガス発電に取り組むことを宣言している。

図3 「室蘭グリーンエネルギータウン構想」の再生可能エネルギー導入目標(TJ:テラジュール、約28万kWh)。出典:室蘭市経済部

 バイオガスを含めて再生可能エネルギーを拡大するのと並行して、水素エネルギーの製造・利用環境を整備する。再生可能エネルギーで作った電力から水素を製造する実証実験にも着手する計画だ。燃料電池自動車や燃料電池バスを導入してCO2を排出しないグリーンエネルギーの地産地消を目指す(図4)。

図4 「室蘭グリーンエネルギータウン構想」の将来イメージ。出典:室蘭市経済部

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