「水素」で走る燃料電池車、普及に向けた国内3社の動き電気自動車(2/2 ページ)

» 2015年04月03日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]
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1980年代から継続的な取り組みを進めるホンダ

 1980年代からFCVの基礎研究をはじめているホンダは1999年に最初のプロトタイプを完成。2002年12月には日本と米国で限定販売を開始している。2004年にスタックを新たにし、2008年には「FCXクラリティ」の販売をスタートしている。

 この間、FCV関連の技術力も高めてきた。2002年発売の「FCX」にはバラード社のスタックを搭載していたが、2005年には自社のスタックを採用するようになった。2008年の「クラリティ」ではスタックをそれまでの床下からセンタートンネルへの配置に変更。これにより、車体の低いFCVを実現。さらに低温性能をマイナス30度へと改善している。

 これらを経て2014年11月には新型のFCVのコンセプトカー「Honda FCV CONCEPT」と、FCVから最大出力9kW(キロワット)のAC出力を可能にする外部給電器のコンセプトモデル「Honda Power Exporter CONCEPT」を世界初披露している(関連記事:ホンダの燃料電池車、「小型化」「安全性」で目指すもの)。

photo 「Honda FCV CONCEPT」と「Honda Power Exporter CONCEPT」(左)の外観

 このコンセプトカーをベースにした新型FCVを、2015年度中に日本で発売する計画だ。その後、米国や欧州へ展開していく。新型車は小型化したスタックを含めたパワートレインを、市販車として世界で初めて、セダンタイプのボンネット内に集約して搭載。これによりゆとりあるフルキャビンパッケージを実現した。この他70MPa(メガパスカル)の高圧水素貯蔵タンクを搭載し、700キロメートル以上の航続距離を実現。水素タンクの再充填は約3分程度という短時間で完了するなど、現在のガソリン車と同等の使い勝手を可能にしている。ホンダはこの新製品をはじめ2020年には米国GMと共同開発で、さらなる低コスト化を図った製品を投入し拡販を進める計画を示している。

着実な研究開発を進める日産

 日産自動車(以下、日産)は2001年から車両開発に着手。2005年にはほぼガソリン車並みの加速性能、航続距離を実現している。2005年以降は量産時の課題解決やコストダウンを狙い、スタックシステムの開発に特化して取り組んでいる。

 スタック本体では高額金属のプラチナ(白金)の使用量の削減を進めており、そのためスタックの小型化(高出力密度化)を図っている。水素タンクついても高額材料であるカーボンファイバーを使っていることから、これを低コスト化するためにさまざまな検討を進めているという。例えば、500キロメートルの走行のためには約5キログラムの水素が必要だが、これを車に搭載するためには高圧で圧縮した水素を貯蔵する必要がある。そのための容器として、カーボンファイバーの強度を維持しつつさらに使用量をできるだけ減らせるように、研究開発を進めているという。

photo 日産が「パリモーターショー2012」で公開した燃料電池車のコンセプトカー「TeRRA」 出典:日産自動車
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