棚田の落差で電力を作る、簡易型の小水力発電が通学路も照らす:自然エネルギー(2/2 ページ)
同じ発電設備は田布施町の西側にある周南市の農業用水路でも1月から動き始めた。棚田のあいだの1メートルの落差を利用して発電する(図5)。流れる水量は毎秒0.019立方メートルと少ない。
図5 棚田の落差を利用した小水力発電。出典:山口県農林水産部
図6 通学路の照明。出典:山口県農林水産部
簡易型の小水力発電設備と合わせて蓄電池を導入して、通学路の照明に利用している(図6)。蓄電池の容量は28Ah(アンペア時)で、夜間に2基の照明(1基あたりの消費電力10W)に電力を供給する。
蓄電池と照明を含めて導入費用は合計100万円かかったが、すべて県の補助金でカバーした。照明が少ない集落の安全対策に役立っている。
このほかにも山口市と萩市の農業用水路で簡易型の小水力発電設備が稼働中だ。さらに宇部市の農地でも導入の準備が進んでいて、県内全域の中山間部に小水力発電の取り組みが広がってきた(図7)。
図7 山口県の市と町。出典:山口県
山口県では2013年度に1000万円の予算で「中山間・棚田ふるさとの和づくり応援事業」を開始した。棚田を生かして地域を活性化するモデルを作ることが目的で、小水力発電の導入事業も補助金の対象に含まれている(図8)。
図8 簡易型の小水力発電を支援する山口県の補助事業制度。出典:山口県農林水産部
*電子ブックレット「小さな農村を小水力発電が潤す」をダウンロード
- 小水力発電をダムに展開、サイフォン式やバルブ式で水流を生かす
山口県には大小を合わせて483本の川が流れている。流域には数多くのダムが設けられて水力発電が盛んだ。それでも利用していない水流が多く残っていることから、小水力発電が広がってきた。水流の落差が小さい場所にサイフォン式の取水設備を採用するなど、独自の試みに注目が集まる。
- 水力発電:全国で2万を超える候補地、発電コストは火力の2倍
日本の再生可能エネルギーの中で導入量が最も多いのは水力発電だ。大規模なダムを使った旧来型の発電設備に加えて、農業用水路などを活用した小水力発電が活発になってきた。全国各地に導入可能な場所は2万以上もある。ただし発電コストが高めで、今後の拡大ペースを左右する。
- 水路があれば発電できる「小水力発電」
再生可能エネルギーの中で、太陽光発電と並んで導入しやすいのが「小水力発電」である。水が流れているところであれば、発電機を設置して発電することが可能だ。全国各地の農業用水路をはじめ、浄水場やダムの放水路など、すでにある水流を生かした小規模な発電設備が広がってきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.