再生エネ導入量全国1位の福岡県、躍進を支える「地方主導」の力自然エネルギー(2/4 ページ)

» 2015年04月16日 13時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

産学間の橋渡しの役目と環境の整備を推進

スマートジャパン 産学連携を掲げている福岡水素戦略ですが、そこで福岡県はどういった役割を担っているのでしょうか。

丸林氏 自分たちが主役になるわけではないですが、企業と大学研究機関をつなぐという部分で行政が担える役割は大きいと考えています。例えば企業が課題や悩みを抱えていたとします。それが機密上の問題から外部には相談しにくいものでも、行政であれば聞き手にまわれることも多い。こうした産学間の橋渡しの役目と、環境の整備というのが福岡県の主な役割です。

図4 「水素エネルギー製品研究試験センター」 出典:福岡県

 福岡県が主導的な役割を果たした事例の1つが「水素エネルギー製品研究試験センター」(図4)の設立です。福岡県が調査を行う中で自動車メーカーや自動車部品メーカーから多かった要望が、水素に関する材料や新製品の製品試験を行いたというものでした。日本国内でに水素の高圧試験が行える施設というのはとても少ない。自動車メーカーによっては、海外の施設に試験を依頼している場合もあるそうです。そこで福岡県が主導して、九州大学が持つ水素材料についての知見を上手く活用しながら糸島地区に公益社団法人として同センターを設立しました。

 水素エネルギー製品研究試験センターは燃料電池車(FCV)から水素ステーションまで、ほぼ全ての水素貯蔵タンクの試験が可能な世界最高水準の設備を整えた試験機関です。2012年4月から運用を開始しており、受注実績は初年度が1億1000万円だったのに対し、2013年度には4億1000万円にまで拡大しています。福岡県内だけでなく、日本全国から受注している状況です。同試験センターを設立することで、周辺地域に水素産業に参入したい企業を誘致する狙いもあります。

スマートジャパン 福岡水素戦略では水素人材の育成もテーマの1つに掲げています。これについて教えてください。

丸林氏 水素エネルギーという新しい産業に対して、企業が自分たちも参入したいと考えた時に、経営者の方が水素についての知識を持っていないということが障壁となっている場合が多いんです。そこで「福岡水素エネルギー人材育成センター」を設立して、経営者の方が水素について学ぶセミナーを開催しています(図5)。

図5 「福岡水素エネルギー人材育成センター」でのセミナーや実習の様子 出典:九州大学

 もちろん経営者の方だけでなく、実際に製品の製造に携わる技術者向けのコースなども提供しています。さらに水素エネルギー産業の将来性を考えて、現役の大学生などの若い世代を対象にしたサマースクールなども開催しています。やはり新しい産業となると分からないことも多いので、学べる機会をしっかりと用意していこうという狙いです。

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