水の電気分解を行う上でエネルギー効率向上を実現するには「電気化学セル」構造を利用する。原理確認用の水分解装置では電解質として液体を利用するが、電気化学セルの場合は固体の「導電性ポリマー(導電性高分子。電気導電性を持つポリマー)」を活用する。これにより、電極間の距離を大幅に縮めることになり、この部分の電気抵抗が減り、反応性の向上や過電圧の低減に寄与する。酸化・還元反応で生成した物質が混ざらず、元の物質に戻ることもなくなるという利点もある(図3)。
水の電気分解については理論的には、1.23V(ボルト)の電圧を掛けることで発生するといわれているが、今回開発したシステムにおいては、実際には1.48Vの電圧が必要となったという。これは、電気化学セル内にさまざまな電気抵抗があり、エネルギーロスが起きていることを示している(図4)。
電気分解に約1.5Vの電圧が必要となる一方で、一般的なシリコン太陽電池は電池1つの最大出力電圧が0.6〜0.7Vだ。そのため研究チームでは、太陽電池の直列接続を行い、水の電気分解が可能な電圧まで高めるとともに、エネルギーロスの少ない接続方法の研究を進めた。
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