東京ガス+九州電力+出光の3社連合、首都圏に石炭火力発電所を建設へ電力供給サービス

電力・ガス・石油の大手による主導権争いが活発になってきた。電力の売上高5位の九州電力が首都圏の事業拡大に向けて、ガス1位の東京ガスと石油2位の出光興産を加えた3社連合で発電事業に乗り出す。最先端の石炭火力発電所を東京電力のガス火力発電所の隣に建設する大胆な計画だ。

» 2015年05月08日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 いよいよ大型の提携プロジェクトが首都圏で動き出す。電力事業の拡大を目指す東京ガスと首都圏進出をもくろむ九州電力が、石油大手の出光興産と組んで東京湾岸に大規模な石炭火力発電所を建設する(図1)。これまでエネルギーの市場を分け合ってきた電力・ガス・石油の大手が共同で発電事業に乗り出すのは初めてで、これを機に市場再編の動きが一気に加速する見通しだ。

図1 石炭火力発電所の建設予定地。出典:出光興産、九州電力、東京ガス

 3社が建設する石炭火力発電所は出力200万kW(キロワット)を予定している。石炭火力の発電方式の中でも効率が高い「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」を採用する。5月1日に3社が共同でSPC(特別目的会社)を設立して、建設工事に向けた環境影響評価(アセスメント)のプロセスに入る(図2)。運転開始は2020年代の半ばを予定している。

図2 3社共同による火力発電事業の概要。出典:九州電力

 発電所の建設予定地には出光興産の「石炭・環境研究所」があるほか、東京ガスの「袖ヶ浦工場」が隣接している。袖ケ浦工場は東京ガスが東京電力と共同で運営しているLNG(液化天然ガス)の供給基地で、構内には東京電力の「袖ヶ浦火力発電所」(出力360万kW)が運転中だ(図3)。

図3 東京電力の「袖ヶ浦火力発電所」の全景。出典:東京電力

 新設する発電所もLNGを燃料に利用するほうが効率的だが、LNGよりも燃料費の安い石炭を使って発電コストを引き下げる。1kWh(キロワット時)の電力を作るのに必要な燃料費は石炭が約5円で、LNGの約10円の半分程度で済む。今後はCO2排出の対策費用が増える見込みだが、それでも電力の小売全面自由化に向けたコスト競争力ではLNGよりも石炭が優位とみられている。

 東京ガスは電力事業を拡大するために、首都圏でLNG火力発電所の増強を進めている(図4)。2015年度中には4カ所の火力発電所を合わせて200万kWを超える体制になる。このほかにも神戸製鋼所が栃木県で建設するLNG火力発電所(出力120万kW)の電力を全量買い取ることを決めていて、2020年には自社・他社を合わせて500万kWの発電事業を展開する計画である。さらに石炭火力を加えて電力の供給体制を強化する。

図4 東京ガスグループのLNG火力発電所(左)、「東京ガスベイパワー袖ヶ浦発電所」(右)。出典:東京ガス

 一方で九州電力は首都圏を中心に九州以外の地域で事業を拡大することが急務になっている。これまで他の地域に発電所を建設したことはなく、東京ガス・出光興産と共同で取り組む今回のプロジェクトが初めてになる。新設する火力発電所が運転を開始するまでは、他の発電事業者や卸電力市場から電力を調達して首都圏の小売事業を展開する方針だ。

 すでに関西電力と中部電力はグループ企業を通じて首都圏の小売事業を開始しているほか、火力発電所の建設計画も進めている。2017年4月にはガスの小売全面自由化が始まることから、ガスの供給・販売でも電力会社とガス会社、さらに石油会社を巻き込んだ提携の動きが活発になっていく。 

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