かつて行政処分を受けたJR東日本の水力発電所、信濃川の水利権を10年間更新法制度・規制

新潟県の信濃川水力発電所はJR東日本が鉄道の運行などで消費する電力のうち4分の1を供給する。2009年には取水量を不正に申告していた問題で行政処分を受けて運転を停止する事態に陥った。2010年に運転を再開後、ようやく2015年7月から10年間の水利使用権を更新することができた。

» 2015年05月13日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 日本で最長の信濃川の流域に「JR東日本信濃川発電所」がある。信濃川に設けたダムから取水して、約30キロメートルの下流におよぶ3つの水力発電所で構成する(図1)。3カ所を合わせた発電能力は最大で45万kW(キロワット)に達して、年間の発電量は14億kWh(キロワット時)を超える。JR東日本が消費する総電力量(約60億kWh)の4分の1を供給する主力の電源だ。

図1 「JR東日本信濃川発電所」を構成する施設。「宮中取水ダム」(左上)、「千手発電所」(右上)、「小千谷発電所」(左下)、「小千谷第二発電所」(右下)。出典:十日町市建設部

 JR東日本は5月8日に地元の十日町市と覚書を締結して、2015年7月1日から10年間にわたる水利使用の許可を得た。ダムに設けた2カ所の取水口から最大で毎秒317立方メートルの水を取り入れる一方、環境保全に必要なダムから信濃川への放流も一定量以上を維持する約束だ(図2)。

図2 発電所と関連施設の全体構成。出典:JR東日本

 この水利権をめぐっては、JR東日本が起こした不正によって行政処分が出て、2009年3月から1年3カ月にわたって発電所の運転を停止した経緯がある。取水量の上限と放流量の下限が決められていたにもかかわらず、実際には取水量が上限を超えて、放流量は下限を下回っていた。取水量と放流量を記録する装置でデータを改ざんして、発電に使用する水量を増やしていたのが実態だ(図3)。

図3 2008年に発覚した水利使用に関する不正の状況(画像をクリックすると拡大)。出典:JR東日本

 監督官庁の国土交通省は「極めて悪質かつ重大な河川法違反が行われていた」と判断して、JR東日本の水利使用権を取り消す処分を2009年2月に下している。その後にJR東日本が再発防止策を講じたことで、2010年6月に水利使用権が復活して、2015年6月末までの5年間の使用許可が出た。この間にJR東日本は毎年の春にサケの稚魚をダムの下流に放流するなどして、環境保全と地域共生の取り組みを続けてきた。

 十日町市とJR東日本が新たに締結した覚書では、2015年7月以降も引き続き取水量の上限と放流量の下限を定めた。特に放流量は過去5年間の実績をもとに季節ごとに変動させる。農業用水が少なくて済む11月中旬〜5月末は毎秒40立方メートルだが、6月〜11月上旬は毎秒60立方メートル程度まで増やす。この環境保全のために維持する流量を利用した小水力発電の導入も両者で具体的に検討する。

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