太陽光発電で全国1位に躍進、被災地に新たなエネルギーの芽生えエネルギー列島2015年版(7)福島(2/3 ページ)

» 2015年06月02日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

10MW超のメガソーラーが相次いで稼働

 太陽光発電の規模の点では、福島空港と同じ須賀川市に建設した「サニーソーラー福島中央発電所」が現在のところ最大だ。もともと「福島空港ゴルフクラブ」があった場所で、ゴルフコースの地形をそのまま利用している。広さが76万平方メートルの用地に10万枚の太陽光パネルを設置して、2015年3月に運転を開始した(図4)。

図4 「サニーソーラー福島中央発電所」の全景。出典:オリックス・ファシリティーズ

 発電能力は26MWにのぼり、年間の発電量は2600万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して7200世帯分に相当する。須賀川市の総世帯数(2万6500世帯)の3割近くをカバーすることができる。健康食品メーカーのサニーヘルスが原子力や化石燃料に依存しないエネルギーの供給を目指して全国に展開する発電所の1つだ。 

 一方で太平洋に面した沿岸部に目を転じると、いわき市にも大規模なメガソーラーが誕生している。三菱グループが復興支援の一環で実施した「小名浜(おなはま)太陽光プロジェクト」によるもので、グループ企業の工場や石油基地の中にメガソーラーを建設した(図5)。

図5 「小名浜太陽光プロジェクト」のメガソーラー。「小名浜・泉ソーラー第一/第二発電所」(上)、「小名浜ソーラー発電所」(下)。出典:三菱電機

 プロジェクト全体の発電規模は18MWに達して、一般家庭で5200世帯分の使用量に匹敵する。この一帯は東日本大震災で津波の被害を受けた地域である。いわき市は再生可能エネルギーを中核に産業の復興を目指す計画で、小名浜地区のメガソーラーを主要な取り組みの1つに位置づけている。

 小名浜地区は福島第一原子力発電所から南へ50キロメートルの位置にある。反対に北へ50キロメートルの沿岸部でも大規模な太陽光発電プロジェクトが始まった。津波で甚大な被害を受けた相馬市の磯部(いそべ)地区に、発電能力が52MWに達する太陽光発電所を建設する計画だ(図6)。

図6 相馬市に建設するメガソーラーの完成イメージ。出典:九電工ほか

 震災前は農地だった場所である。津波による塩害で農作物の栽培が困難になったことから、メガソーラーに転用することが認められた。70万平方メートルの用地に20万枚の太陽光パネルを設置する。年間の発電量は6000万kWhを想定していて、一般家庭で1万7000世帯分に匹敵する電力を供給することができる。

 このプロジェクトは九電工とオリックスを中心に5社が共同で推進する。2015年7月に着工して、2年後の2017年6月に運転を開始する予定だ。完成すると福島県では最大のメガソーラーになり、東北地方でも青森県で建設中の「ユーラス六ヶ所ソーラーパーク」(115MW)に次ぐ規模になる。

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