笑うパワコン、泣くパネル、太陽光発電各社の決算動向太陽光(2/3 ページ)

» 2015年06月02日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

国内工場で増産を決めたパナソニック

 パナソニックの太陽電池事業は、住宅用太陽光発電システムについては増収増益となった。ただ2015年度については価格下落が見込まれる他、買取り制度や国のエネルギー政策などの問題で需要が左右されるため「慎重に見ている」(同社)。

 決して楽観視できない環境ではあるが、パナソニックでは2015年5月に、太陽電池モジュール「HIT」の国内工場への新たな設備投資を決定したことを発表した(関連記事)。セルの生産拠点である島根工場とモジュールの生産拠点である滋賀工場の生産ラインをそれぞれ増強し、2015年度末にはマレーシア工場と二色の浜工場(大阪府)と合わせてグローバルで1GWを超える生産体制を構築する。今回の設備投資でHITの生産量を拡大しグローバルでの需要に対応。国内ではパナソニックの総合力を生かして太陽光発電システムをコアとしてエコキュート、蓄電池、省エネ家電等と連携し「スマートHEMS」を積極的に提案していく方針だ(図2)。

photo 図2:設備投資により増産する予定のパナソニックHIT太陽電池ラインアップ

系統接続問題に苦しむ京セラやソーラーフロンティア

 京セラの2014年度のファインセラミック応用品関連事業の内、ソーラーエネルギー事業の実績は、売上高は前年度に比べほぼ横ばいとなった。太陽電池価格の下落および一部の電力会社による系統接続の保留などの市況悪化の影響は受けたものの、製品ラインアップの拡充や積極的な販売策を推進したことでカバーしたという。

 一方、事業利益については、ソーラーエネルギー事業における価格下落の影響に加え、同事業でのたな卸資産を中心とした資産評価の見直しなどに伴う損失計上により、前年度に比べ減少した。2015年度については国内太陽電池市場の縮小が予想されるものの、HEMSや蓄電システムの需要は引き続き増加する見通しで、これらの領域の強化を推進するとしている。

 ソーラーフロンティアの状況について、親会社である昭和シェル石油の2015年12月期第1四半期(1-3月)決算から見ると、パネル出荷数量は減少傾向にある。要因としては、系統接続問題や再生可能エネルギー固定価格買取り制度のルール改定の影響で、新規の国内需要が伸び悩んだ点がある。

 今後については、国内需要は成長鈍化を予想。その中で同社は、将来の出荷増に向け新たな需要を獲得する活動を強化する。国内では、自社開発した太陽光発電所を第三者に売却するビジネスモデル第一号案件の売買に成功した他、海外では米国で合計280MWの太陽光発電所開発プロジェクトを手掛けることを決定した(関連記事)。生産面では、今後の海外生産拠点展開へのモデル工場という位置付けとしてCIS最新技術を実証する東北工場の建設を計画通り2015年3月末までに完了させた。国内外のパネル販売価格が下落基調にあるが、生産コストの低減も年間計画に沿って継続して取り組む構えだ。

 三菱電機の15年3月期の太陽電池は、「販売数量は微増となったものの、価格低下の影響を受けて売上高は1割強減少した」(同社)と単価ダウン傾向を示している。

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