笑うパワコン、泣くパネル、太陽光発電各社の決算動向太陽光(3/3 ページ)

» 2015年06月02日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]
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太陽光発電システムの流通・施工業者も苦戦

 太陽光発電システムの流通・施工業者についても、決算からは厳しい状況が見受けられる。

 太陽光発電システムの大手卸である高島の2015年3月期決算は、太陽エネルギー関連分野において、産業用物件や蓄電池などは増加したが、住宅向けは消費税増税と補助金終了の影響などで売上高が減少。また、競争の激化で利益率も低下した、としている。

 サニックスの2015年3月期のSE事業部門は、太陽光発電システムの施工件数が増加しており、同事業部の売上高は722億4700万円(前年同期比27.6%増)を記録した。一方、営業損益は、売上高に占める人件費などの固定費比率が大きく上昇したことから、22億9100万円の営業損失(前年同期は47億8200万円の営業利益)を出し、赤字に転落した。損失の要因は、事業規模拡大に向けての採用の強化により、増加した固定費の負担が大きくなったためで、今月には人員の適正化に向け希望退職者の募集を実施することも発表している(関連記事)。2015年度の売上高については、東日本地区増収を見込むものの、西日本地区を含む事業部全体では前年同期比減収を予想。利益については、人件費を含む総経費圧縮により採算性を改善し、黒字に転換することを見込む。

 ウエストホールディングスの2015年度8月期第2四半期決算は、特定の地域に経営資源を集中的に投下する「エリアドミナント戦略」を積極的に推進したが、市場環境が急激に厳しさを増し、売上高が234億3800万円(前年期比15.1%減)、営業利益が29億7300万円(同31.7%減)と減収減益となった。悪化の要因は、再生可能エネルギー発電設備の接続申込みに対し、複数の電力会社で回答保留が生じている他、その他の電力会社においても接続検討の期間が長引くなどの影響が出ているためだ。

業界全体が苦戦傾向の中、躍進するパワコン

 太陽光パネルメーカーや施工業者が苦戦する中、施工件数は順調に増えていることから、パワーコンディショナメーカーは大きな成長を見せている。

 田淵電機の2015年度3月期の電源機器事業は、太陽光発電用パワーコンディショナが大幅に増加し、売上高が441億5千万円(前期比30.6%増)、営業利益は103億3千万円(前期比109.8%増)となった。同社では太陽光発電用パワーコンディショナ事業の「多核化」を推進し、市場環境の変化に対応。住宅用途から産業用途までのラインアップの拡充を図った。

 中でも産業用低圧連系向けが大きく伸張し、10〜100kW帯で高い市場シェアを獲得している。また、より大規模な太陽光発電事業に特化した分散型システムの提供の開始や電力の需給バランスに対応可能な蓄電池を併用した太陽光とのハイブリッドパワーコンディショナの製品化を進めている。これらの製品は国内だけでなく、北米市場、AEAN、中国地域向けなどグローバル拡販活動を強力に推進。2015年度も蓄電ハイブリッドパワコンなどの販売を強化する方針だ。

 オムロンは、太陽光発電システム用パワーコンディショナが堅調な伸びをみせていることから2014年5月に生産能力の増強を図った。2014年12月にはKPシリーズの累計生産が100万台を突破するなど、好調を持続している。このようにパワコンが堅調な伸びをみせたことから同社の2015年度3月期のパワコンを中心とする環境事業の売り上げは増加している。

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