塗って作れる有機薄膜太陽電池の変換効率10%を達成太陽光(2/2 ページ)

» 2015年06月08日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]
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逆構造素子で効率向上

 また素子の構造については、半導体ポリマーは、ポリマー分子が基板に対して平行な「フェイスオン配向」と、基板に対して垂直な「エッジオン配向」という2つの異なる配向状態を形成する。OPVではフェイスオン配向した分子の方が電荷を流しやすく、この割合が多い方が有利となる。PNTz4Tの場合は、フェイスオン配向とエッジオン配向の分子が混合した状態にあることが分かった。

 さらに、従来用いていた順構造素子と、今回用いた逆構造素子の発電層中に含まれるフェイスオン配向の分子の割合を比べたところ、逆構造素子はフェイスオン配向分子が多いことが分かった。どちらの素子構造でも、上部電極側にはフェイスオン配向、下部電極側にはエッジオン配向の分子の割合が多く、PNTz4Tは上部電極方向にホールを流しやすい構造だということが明らかとなった。そこで、逆構造素子で、ホールを収集する陽極が上部電極として配置されるようにし、ホールの流れに合った構造とすることに成功。変換効率を向上したという(図2)。

photo 図2:PNTz4Tを発電層として用いたOPV素子の模式図 ※出典:理研

 これまで、半導体ポリマーの分子配向様式を制御することが重要であることはよく知られていましたが、今回の研究により初めて、OPV中において半導体ポリマーの配向様式に分布があること、さらにこれに合った素子構造に改善することが効率向上の鍵であることを明らかになったという。

 今回の研究によって、どのような半導体ポリマーを用いればよいか、またどのような点に着目すれば達成するのかを明らかになり、OPVの高効率化を目指す上で、重要な知見となると見られる。同研究チームでは今後、PNTz4Tに改良を加え、材料に適した素子構造を開発することで、実用化の目安とされるエネルギー変換効率15%の到達に取り組んでいくという。

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