海外で作った「水素」が海を越えて日本へ、6年400億円のプロジェクト始動自然エネルギー(3/4 ページ)

» 2015年06月10日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

未利用褐炭由来大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業

 川崎重工、岩谷産業、電源開発が認証を受けた「未利用褐炭由来大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」は、オーストラリアの未利用エネルギーである褐炭を用いて水素を製造し、貯蔵・輸送・利用までが一体となった液化水素サプライチェーンの構築を目指すもの。実現のためには以下の3つの技術が必要になる。

  1. 褐炭ガス化技術の開発と褐炭ガス化炉オペレーション技術の開発(褐炭から水素を製造する技術)
  2. 液化水素の長距離大量輸送技術の開発と輸送用タンクオペレーション技術の開発(液化水素の精製と輸送技術)
  3. 液化水素の荷役技術と荷役基地オペレーション技術の開発

 石炭のガス化については既に多くの技術が確立されているが「より低品位の褐炭において最適なガス化は難しい」と橋本氏は述べる。液化水素の長距離大量輸送技術については既に川崎重工が技術開発を進めているがこれを商用レベルで活用できるかどうか検証を進めていくという(関連記事)。さらに、液化水素を海上から陸上に揚げる際のノウハウも現状は存在しないため、これらを実際に検証しながら、知見を蓄積していく方針だ。2015〜2016年度にかけて要素試験や仕様検討を行い、2016年度後半から設計や製作・試運転を実施。2020年度には実証運転を行う計画だ(図4)。

photo 図4:未利用褐炭由来大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業の概要(クリックで拡大)※出典:NEDO

有機ケミカルハイドライド法による水素サプライチェーン実証

 エネルギーキャリアとしては、先述した液体水素を利用する場合に加え、有機ケミカルハイドライド法を用いたものについてもプロジェクト認証されている。千代田化工建設が参加する「有機ケミカルハイドライド法による未利用エネルギー由来水素サプライチェーン実証」である。これは、未利用資源から製造した水素を有機ケミカルハイドライド法により、トルエンを加えてメチルシクロヘキサンとして消費地まで輸送し、脱水素プラントにより水素を抜いて供給できるようにするというものだ。

 同技術は既に千代田化工建設によって開発されており、同社の子安オフィス・リサーチパーク(横浜市神奈川区)に実証実験用のプラントなども用意されている(関連記事)が「より大規模な実証プラントで、商用運用の可能性を検証する」(千代田化工建設)としている。同プロジェクトは最初の2年を1期、後の4年を2期とし、1期については基盤技術の検証を実施し、2期はその結果を踏まえて、設計・製作・試運転を進めていく(図5)。

photo 図5:有機ケミカルハイドライド法による未利用エネルギー由来水素サプライチェーン実証の概要(クリックで拡大)※出典:NEDO

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