1万2000人の雇用創出へ、再生可能エネルギーの産業化を加速する「九州モデル」開始自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2015年06月11日 13時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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海洋エネルギー開発を行う企業を誘致

図3 長崎県 椛島沖の洋上風力発電設備 出典:戸田建設

 国土が狭く海に囲まれた日本にとって、海洋エネルギーの活用は再生可能エネルギーの導入促進に対し大きな鍵を握る。現在、潮流、波力、洋上風力など、海洋エネルギーを活用した次世代発電技術の実用化に向けた実証が全国各地で進められている段階だ。九州もその1つで、国から実証フィールドとして認定されている長崎県(図3)や佐賀県沖の複数の海域で実証実験が行われている(関連記事)。

 海洋エネルギー関連産業の拠点化WGでは、こうした海洋エネルギー発電の実証事業に取り組む事業者のさらなる誘致を行う。具体的には2020年までに潮流発電の実証を行う企業を8社、浮体式洋上風力発電は4社、海流発電については2社の誘致を目指す。

 同WGの活動拠点の1つとなる唐津市加部島沖の実証フィールドに対して、佐賀県は2015年6月9日に発表した同年度6月の補正予算案で、約6000万円を運用・整備などに充てる方針を示している。具体的には同実証フィールドに気象・海象観測装置を設置する他、海洋エネルギー関連産業の拠点化WGとの連携を見込んでいる「佐賀県海エネ産業クラスター研究会」の運営などを行う予定だ。

 同県では「佐賀モデル」として加部島沖の実証フィールドを起点に漁業、造船・建設などの製造業、運輸、宿泊、飲食などの観光産業を連携することで、地域を活性化させるモデルの構築を目指している(図4)。2018年までにこの佐賀モデルに40の事業者が加わることを目標に挙げている。

図4 「佐賀モデル」の概要 出典:佐賀県

 今回の海洋エネルギー関連産業の拠点化WGの活動は、こうした佐賀県の取り組みをさらに加速させることになる。九州地域でもう1つの実証フィールドを持つ県である長崎県とともに、次世代の海洋エネルギー開発で全国リードし、同時に産業化を進めて地域の活性化を図る考えだ。

水素の地産地消を行うモデル市場の構築へ

 水素エネルギー関連産業の拠点化WGでは、まず燃料電池車(FCV)や家庭用燃料電池の普及など、水素や燃料電池に関する社会の受容性の拡大を進めていく。最終的に水素の製造から供給までを全て九州地域内で行う、地産地消型のモデル市場を構築することが目標だ。具体的にはエネルギーの地産地消につながる水素の利活用プロジェクトを2020年までに累計20件、2030年には40件に拡大させることを目標にしている。

 さらにFCVの普及に欠かせない水素ステーションについては、2020年に九州と山口県内に併せて20カ所を整備する方針だ。2015年時点で九州地域に整備されている水素ステーションの数は、実証設備を含めて4つのみ。今後5年の間に急ピッチで整備を進めることになる。

 同WGではこうした目標の達成に向けて、九州地域内の水素関連企業の技術力向上や、水素事業に新たに参入する企業の増加も目指す。こうした取り組みによって得られた成果は国内外に展開することも視野に入れている。

 九州地域における水素エネルギー実用化に向けた動きでは、2004年に「福岡水素戦略」を開始している福岡県が、産学連携の体制で多くの先進的な取り組みを進めている(関連記事)。その中核を担っているのが水素エネルギーの利活用に関する多くの知見を持つ九州大学であり、このWGのトップも同大学が務める(関連記事)。

 九州大学は同大学が2014年から取り組んでいる「スマート燃料電池社会実証」の一環として、再生可能エネルギーを水素として貯蔵する実証実験をスタートさせている(関連記事)。今回の同WGの活動目的には、こうした再生可能エネルギーの出力変動や一時的な電力余剰といった課題に対して、水素を利用して対応する技術の開発も含まれている。

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