森林に優しいメガソーラーを、市街地ではバイオガス発電エネルギー列島2015年版(9)栃木(1/2 ページ)

高原が広がる栃木県の北部で大規模なメガソーラーの建設計画が相次いで始まり、太陽光発電の導入量が急速に伸びている。周辺の森林と調和を図る設計を取り入れながら、環境負荷の低い太陽光発電を増やしていく。都市部では下水処理場のバイオガス発電設備が続々と運転を開始する。

» 2015年06月16日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 栃木県で最も北に位置する那須塩原市の一角で、大規模なメガソーラーの建設工事が進んでいる。広さが37万平方メートルの民有林を造成して、発電能力が25MW(メガワット)に達するメガソーラーを建設する計画だ(図1)。一帯は「那須野が原」と呼ばれる高原で、キャンプ場やゴルフ場が数多くあるリゾート地として知られる。

図1 「那須塩原ソーラー」の完成イメージ。出典:レノバ

 那須塩原市には自然を保護する条例があるため、発電事業者のレノバは環境に配慮した建設計画を策定して工事に臨んだ。用地の周囲に30メートルの幅で森林を残して景観を損なわないようにするのと同時に、動植物が生息しやすい環境を維持していく方針だ(図2)。メガソーラーを運転する20年間に森林が健全な状態に戻るように間伐や除草も定期的に実施する。

図2 外周林のゾーン区分(上)、「混交林保全ゾーン」の20年目のイメージ(下)。出典:レノバ

 運転開始は2015年9月の予定で、年間に2600万kWh(キロワット時)の電力を供給できる見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると7200世帯分に相当して、那須塩原市の総世帯数(約4万6500世帯)の15%にあたる。森林地帯にメガソーラーを建設するモデルケースとして注目が集まる。

 この地域に多いゴルフ場の跡地をメガソーラーへ転換するプロジェクトも相次いで始まった。不動産会社のタカラレーベンは那須郡に所有するゴルフ場の跡地でメガソーラーの建設を進めている。ゴルフコースの地形をそのまま利用して、12万枚の太陽光パネルを18ホールに分散して設置する(図3)。

図3 那須郡にあるゴルフ場の跡地に建設するメガソーラーの完成イメージ。出典:タカラレーベンほか

 発電能力が20MWになる大規模なメガソーラーだが、太陽光パネルを各ホールに分散して設置できるように、電力を送電するパワーコンディショナーには小型の20kW(キロワット)タイプを採用した。合計で750台にのぼるパワーコンディショナーを配置する予定だ。年間の発電量は2100万kWhを見込んでいて、一般家庭で5800世帯分の電力を供給することができる。

 さらに規模の大きいプロジェクトも始まっている。不動産会社のケン・コーポレーションが那須烏山市に所有するゴルフ場の跡地に、発電能力が29MWのメガソーラーを建設中だ。木に囲まれたゴルフコースの平坦な部分に太陽光パネルを設置する(図4)。かつてのバブル時代に数多く造られたゴルフ場が再生可能エネルギーの供給基地に次々と生まれ変わっていく。

図4 「ケン那須烏山太陽光発電所」の完成イメージ。全景(上)と太陽光パネルの設置状態(下)。出典:ケン・コーポレーション

 こうした取り組みによって栃木県の太陽光発電の導入量が急速に拡大している。固定価格買取制度の認定を受けた太陽光発電設備の規模では全国で6位に躍進した(図5)。1年間で3倍に増えて300万kWを超えている。加えて従来から活発に進んでいた小水力発電とバイオマス発電が県内の各地域に広がってきた。

図5 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)
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