進化を続ける火力発電、燃料電池を内蔵して発電効率60%超に蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2015年06月19日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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LNG火力は「トリプルコンバインド」に

 一方のLNG火力は現時点で主流のGTCC(ガスタービン複合発電)を1700度以上の超高温に引き上げることが当面の課題になる。三菱日立パワーシステムズが1700度級のGTCCを開発中で、兵庫県の自社工場で2018年に運転を開始する予定だ。その次に燃料電池を組み合わせた「ガスタービン燃料電池複合発電(GTFC:Gas Turbine Fuel Cell combined cycle)」の実用化へ進んでいく。

 GTFCの開発でも三菱日立パワーシステムズが先行している。燃料電池の中では発電効率が高い「固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)」を組み込んだGTFCを開発中だ(図4)。全体の発電効率は小規模の数万kW(キロワット)級の場合で60%、中〜大規模の数十万kW級では70%を目標にしている。

図4 「GTFC」の仕組み(上)と発電設備の外観イメージ(下)。出典:三菱重工業(現・三菱日立パワーシステムズ)

 このGTFCでは燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンの順に3段階で発電する。天然ガスを改質して水素を取り出してから燃料電池で発電した後に、燃料電池で改質できなかった天然ガスをガスタービンに供給する仕組みだ。この方法で発電効率を高めることができる。3段階で発電することから「トリプルコンバインドサイクル」とも呼ぶ。

CO2も燃料も2030年に2割以上減る

 燃料電池を組み合わせて石炭火力とLNG火力の発電効率を向上させながら、2030年に向けてCO2排出量を削減することが可能になる。石炭火力では現時点で最先端のUSCと比べても、2020年にIGCCで約2割、2030年にはIGFCで約3割を削減できる見通しだ(図5)。

図5 次世代の火力発電によるCO2削減効果。出典:資源エネルギー庁

 LNG火力でもGTCCの燃焼温度を1500度級から1700度級に引き上げれば、2020年にはCO2排出量が1割ほど少なくなる。さらに2030年にGTFCを実用化できると、約2割の削減効果を期待できる。同時に燃料も少なくて済むため、発電コストも低下する。

 このほかにLNG火力では「高湿分空気利用ガスタービン(A-HAT:Advanced-Humid Air Turbine)」と呼ぶ技術が重要な役割を果たしていく。出力が20万kW程度までの中〜小規模の発電設備を対象にしたもので、ガスタービンだけで発電する。

 A-HATは「増湿塔」と呼ぶ装置で作った高湿・高温の空気を燃焼させてガスタービンに送り込む方法で、発電効率を高めることができる(図6)。ガスタービン単独でもGTCCと同等以上の発電効率になり、発電コストはGTCCを上回る。2020年までに実用化できる予定だ。このA-HATでも燃料電池を組み合わせて発電効率を向上させる検討が進んでいる。

図6 「A-HAT」の仕組み(GTCCと比較)。出典:三菱日立パワーシステムズ

 発電効率の改善と並行して、火力発電に伴って排出するCO2を回収・利用・貯留する「CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」を実現するための技術開発計画もロードマップに盛り込む。CO2の利用技術では人工光合成による化学原料の生産などに取り組む方針だ(図7)。CCUSも2030年代の実用化を目指す。

図7 「CCUS」の全体像と主な取り組み(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

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