水力発電が再生可能エネルギーの6割を占める、過去5年間の成長率は3%台再生可能エネルギーのグローバルトレンド(4)

全世界で稼働している再生可能エネルギーの発電設備は6割が水力によるものだ。そのうち4分の1が中国で、ブラジル・ロシア・インドを加えたBRICSの4カ国を合計すると44%になる。日本のシェアは2%。ただし大規模な水力発電は環境に対する影響から世界全体では増えていない。

» 2015年06月25日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

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図1 上位6カ国の水力発電設備の総容量のシェア(2014年末時点)。出典:REN21

 水力発電は大規模なダムを利用した旧来型の設備が多く、面積の広い国に偏在する傾向がある。世界全体の水力発電の総容量は10億kW(キロワット)を超えるが、実に27%が中国に集中している(図1)。

 次いでブラジルが8.5%、米国が7.5%、カナダが7.3%の順でシェアが大きい。ロシアとインドが4%台で続き、21世紀の経済成長が見込まれるBRICS(Brazil, Russia, India, China)の4カ国で44%を占める勢いだ。2014年に運転を開始した水力発電設備の容量でもBRICSが上位に並ぶ(図2)。

図2 新規導入量の多い上位6カ国の水力発電設備の総容量。棒グラフの上の部分は2014年の新設分、下は2013年末の累計。単位:ギガワット(=100万キロワット)。出典:REN21

 中国では1年間に2200万kWの水力発電設備が稼働して他国を圧倒している。2番目に多いのはブラジルの330万kWで、インドとロシアでも100万kW以上が加わった。途上国ではエチオピアを中心にアフリカで大規模な開発プロジェクトが増えている。

 日本の水力発電は稼働中の設備全体を合計しても2200万kWにとどまり、中国が2014年に導入した1年分と同じ水準だ。日本では大規模な水力発電の開発計画が少なくて、最近は農業用水路などを活用した小水力発電の導入が中心になっている。

 大規模な水力発電は環境破壊の問題から、多くの国で開発計画を中止する動きが増えてきた。そうした影響もあって、全世界の水力発電設備の成長率は直近の5年間で3%台にとどまっている(図3)。5種類の再生可能エネルギーの中では最低の伸び率で、今後も成長は期待しにくい。

図3 再生可能エネルギーによる発電設備の成長率。棒グラフの左側は2010〜2014年の平均、右側は2014年の単年。種別は左から順に、地熱、水力、太陽光、太陽熱、風力。出典:REN21

 それでも再生可能エネルギーの電力源として、引き続き世界各国で重要な役割を担うことに変わりはない。2014年末の時点で稼働している水力発電設備の総容量は10億5500万kWに達して、再生可能エネルギー全体の6割以上を占めている(図4)。

図4 全世界で稼働している再生可能エネルギーによる発電設備の総容量。単位:ギガワット。左側の数字は2014年の新規導入分、右側の数字は2014年末の累計。種別は上から順に、バイオマス、地熱、水力、海洋、太陽光、太陽熱、風力。出典:REN21

 太陽光や風力と比べて設備利用率(容量に対する実際の発電量)が高いことも有利な点だ。ただし国によっては長期間の干ばつが続いて、年間の発電量が想定値を下回るケースもある。中国では2013年に発電量が減少したほか、米国では2012年から3年連続で干ばつによる発電量の減少が見られる。

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