今回開発された技術は、これらの課題を克服し、高い再現性と安定性を持ってペロブスカイト太陽電池を作成できるようにし、ペロブスカイト太陽電池の動作特性の解明や特性の正しい検証などを可能にするものだ。
研究は、物質・材料研究機構 ナノ材料科学環境拠点のペロブスカイト太陽電池特別推進チームが行ったもので、次世代太陽電池実現に必要不可欠な低温・溶液プロセスを用いて、高い再現性や安定性を有するペロブスカイト太陽電池を作成することに成功した(図3)。
今回の研究では、ペロブスカイト結晶を生成する過程に塩素を添加する相互拡散法(Chlorine-mediated interdiffusion method)を新たに開発したことが特徴だ。相互拡散法は、ペロブスカイト層を溶液プロセスで作製する際に用いる成膜法の一つ。順番に塗布プロセスで堆積したヨウ化鉛層とメチルアンモニウム層を約100度でアニール処理する事でペロブスカイト薄膜を作成する方法だ。
この生成方法により、高効率ペロブスカイト太陽電池を低温・溶液プロセスで生成することに成功した。同プロセスでは、最大でも140度未満のプロセス温度での生成が可能であるため、プラスチックなどフレキシブル太陽電池の実現にも貢献する。また、長期間におよび一定の出力特性が得られる安定性を実現する他、約2時間の連続光照射下でも安定した出力特性を維持する耐久性や、電圧掃引方向に関係なく一定の変換効率が得られる出力特性なども再現することに成功した。これにより、同太陽電池の実用化に向けた研究・開発に加え、そこに至る検証や実証に大きく貢献することが期待される。
今後に向けては、太陽電池内部におけるペロブスカイト結晶状態やペロブスカイトと接する各電荷輸送層の界面状態について、等価回路モデルやインピーダンス測定などによる解析を進め、性能との相関関係を明らかにしていくとしている。
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