実際に再生可能エネルギーの開発に必要なプロセスと期間を検証すると、大幅に短縮するのは難しいことがわかる。風力発電では事業化を判断する前の立地調査や風況調査に1年以上を要するのが一般的だ(図4)。地域ごとに年間の日射量から発電量を予測できる太陽光発電と違って、風速や風向きは同じ地域でも場所によって差がある。
さらに発電能力が7.5MW以上の風力発電設備を建設する場合には、環境影響評価(アセスメント)が義務づけられている。特に10MW以上になると綿密な評価が必要になるため、完了までに通常のケースで3〜4年かかる。その過程で発電設備の縮小や計画の中止を求められることもある。
環境省と経済産業省は手続きを簡素化して期間を半分以下の1年強に短縮する目標を掲げているが、実現のめどは立っていない。風力発電は周辺に騒音被害をもたらす可能性があるほか、鳥類の衝突など動植物に対する影響も軽視できず、手続きを簡素化するハードルは高い。
一方で中小水力発電と地熱発電では、資源量の調査に長期間かかる場合がある。中小水力は水を取り込む方法に何通りかあるが、河川から水路を引いて取り込む「流れ込み式」になると、発電に利用できる水の流量を把握できるまでに10年かかることもある(図5)。さらに水利権の取得などが必要で、建設工事を開始する前に事業化を断念するケースも少なくない。
その点では農業用水路を利用する小水力発電のほうが開発期間は短くて済む。発電に利用できる水の流量を把握しやすいことに加えて、用水路を管理する自治体が発電事業者になる場合が多く、地域の農業関係者とも調整作業を進めやすい。発電事業によって用水路の維持管理費を低減できるため、農業関係者にもメリットが生まれる。
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