ロードマップの最終目標として、第3世代の火力発電技術を2025年に確立する。政府は2030年までに国全体のCO2排出量を2013年比で26%削減することを国際公約に掲げた。この目標を達成するためには、火力発電によるCO2排出量を大幅に減らす必要がある。2025年をめどに発電効率の高い第3世代の技術を実用化できなければ、国の威信にかかわる重要な問題になりかねない。
第3世代では第2世代のコンバインドサイクル方式に燃料電池を加えて、3段階で発電するトリプルコンバインドサイクルが主流になる。LNG火力では「ガスタービン燃料電池複合発電(GTFC:Gas Turbine Fuel Cell combined cycle)」、石炭火力では第2世代のIGCCに続く「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC:Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycle)」である。
トリプルコンバインドサイクルは第1段階で「固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)」を利用する(図5)。天然ガスか石炭ガスを化学反応で改質して水素を取り出し、その後に酸素と反応させて発電する仕組みだ。第2段階では燃料電池の排熱も利用しながらガスタービンで発電する。さらに第3段階ではガスタービンからの排熱で蒸気を発生させることによって3度目の発電が可能になる。
この3段階の発電プロセスを組み合わせれば、商用レベルの大規模な発電設備でも2020年代には60%を超える発電効率を達成できる見通しだ。トリプルコンバインドサイクル発電の実証プロジェクトに取り組んでいる三菱日立パワーシステムズによると、出力が40万kW(キロワット)級の発電設備に適用した場合、発電効率は63%まで向上する(図6)。
現在のLNG火力で最も効率が高いコンバインドサイクル方式の発電効率は50%台で、第2世代の技術開発が進んでも最高で60%台の前半が限界とみられている(図7)。一方でトリプルコンバインドサイクル方式は燃料電池とコンバインドサイクルの両方の技術の進化によって、2030〜40年代には70%まで達する可能性がある。
日本は家庭向けの燃料電池「エネファーム」や水素で走る燃料電池自動車を世界に先がけて製品化するなど、燃料電池の技術レベルでは他国を上回る。加えてコンバインドサイクルや石炭ガス化の技術開発でも先行していることから、国を挙げて次世代の火力発電技術を進化させていけば、圧倒的な競争優位を築ける期待は大きい。
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