CO2フリーの水素を製造、太陽光とバイオマスで電力供給エネルギー列島2015年版(14)神奈川(2/3 ページ)

» 2015年07月21日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

バイオガスからCO2フリーの水素を作る

 川崎市は3月に「川崎水素戦略」を策定して、「水素to人が暮らすまち」の実現に向けた取り組みを開始した。すでに市内には数多くの関連企業が集まっている(図4)。新しい水素産業の拡大と合わせて、災害に強い未来志向の環境・産業都市を形成する計画だ。

図4 川崎市内に集積する水素関連の企業と技術。出典:川崎市総合企画局

 東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までを第1フェーズに設定して、臨海部に水素の供給ネットワークを構築する。その後の第2フェーズでは水素の需要を大量に生み出すために、燃料電池車や家庭用の燃料電池の普及を促進しながら、産業用の水素発電所の実用化にも取り組んでいく。

 水素社会の実現に向けて動き出したのは川崎市だけではない。神奈川県は3月に「神奈川の水素社会実現ロードマップ」を発表して、水素を利用する燃料電池車の拡大に乗り出した。特に注目すべきは水素ステーションの整備計画だ。

 2020年までに県内25カ所に水素ステーションを設置する目標を掲げて事業者の誘致を進めていく(図5)。乗用車の保有台数が多い横浜市や川崎市など県の東部では最寄りの水素ステーションまで10分程度、それ以外の地域でも15分程度で到達できるようにする。

図5 神奈川県内の水素ステーション整備目標(2020年度)。出典:神奈川県産業労働局

 東京23区に次いで全国で2番目に多い370万人の人口を抱える横浜市でも、水素の取り組みは始まっている。中でもユニークなプロジェクトが、下水を利用して水素を製造するシステムの開発である。市内の下水処理場で汚泥からバイオガスを発生させて、燃料電池で電力や熱を供給する仕組みだ(図6)。

図6 下水バイオガスによるマルチエネルギー供給システム(画像をクリックすると拡大)。出典:横浜市環境創造局

 このプロジェクトには東京ガスと三菱日立パワーシステムズが加わって、両社が開発した最先端の技術を投入する。東京ガスが下水のバイオガスからメタンを抽出して高濃度に生成する技術を提供する一方、三菱日立パワーシステムズは高効率のコージェネレーションシステムで電力・熱・水素まで供給できるようにする。まだ研究段階だが、実用化できれば水素を活用した次世代のエネルギー供給システムになる。

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