CO2フリーの水素を製造、太陽光とバイオマスで電力供給エネルギー列島2015年版(14)神奈川(3/3 ページ)

» 2015年07月21日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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臨海部にバイオマス、山間部にはメガソーラー

 バイオマスの分野では、川崎市が2015年度中に実証試験を始める「エネルギー循環型ごみ収集システム」の発想も面白い。ごみの焼却処理施設で廃棄物を使って発電して、ごみを回収する「EV(電気自動車)ごみ収集車」に電力を供給する仕組みだ。

 EVごみ収集車に搭載する電池は備蓄・交換できる体制にして、長い充電時間をかけずに運行できるようにする。さらに災害時にはEVごみ収集車が避難所などに移動して電力の供給源になる(図7)。EVごみ収集車は日産自動車の電気トラックをベースに開発する予定で、廃棄物発電を利用した日本で初めてのごみ収集システムとして注目を集めている。

図7 「エネルギー循環型ごみ収集システム」の実証イメージ。出典:川崎市環境局、JFEエンジニアリング

 神奈川県では再生可能エネルギーの中でもバイオマス発電の導入が活発に進んでいる。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は全国で4番目に大きい(図8)。川崎市の臨海部には燃料の輸送に適した立地から火力発電所が数多く集まり、最近では木質バイオマス発電所も増えてきた。

図8 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

 昭和シェル石油は東京湾に面した製油所の跡地に、東南アジアから輸入するパームヤシ殻を燃料に使える木質バイオマス発電所を建設中だ。12月に運転を開始する予定で、発電能力は49MW(メガワット)に達する。年間の発電量は3億kWhにのぼり、8万世帯分を超える電力を供給できるようになる。

 臨海部で水素とバイオマスが拡大する一方、県の西側に広がる山間部では大規模なメガソーラーの建設が相次いでいる。足柄上郡(あしがらかみぐん)では10MW級のメガソーラーが4月に2カ所で運転を開始した。1カ所はコマツがブルドーザーの試験場に使っていた広大な土地、もう1カ所はミカン畑を縮小した跡地だ(図9)。

図9 「足柄大井ソーラーウェイ」(上)、「SGET中井メガソーラー」(下)。出典:日本アジアグループ、スパークス・グループ

 発電能力は13MWと10MWで、2カ所の発電量を合わせると年間に2300万kWhの電力を供給することができる。一般家庭で6400世帯分の使用量に匹敵する。メガソーラーが立地する大井町と中井町の総世帯数を合計すると1万世帯になり、その3分の2をカバーできる計算だ。

 人口が集中する臨海部、森林が広がる山間部、それぞれの特性を生かした電力の地産地消が進んできた。新たなエネルギー源になる水素を加えて、CO2フリーの電力を供給する体制が神奈川県の全域に拡大していく。

*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −関東・甲信越 Part2−」をダウンロード

2016年版(14)神奈川:「水素エネルギーが港のCO2を減らす、国内最大の木質バイオマス発電所も稼働」

2014年版(14)神奈川:「水素とバイオマスで一歩先へ、化石燃料を使わない電力源を地域に広げる」

2013年版(14)神奈川:「太陽光発電が毎年2倍に増える、再エネ率20%へ小水力にも挑む」

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