太陽光と風力で電圧変動が限界に近づく予測、九州電力の11地域に電力供給サービス

再生可能エネルギーの発電設備が増加すると、電力会社の送配電ネットワークに支障をきたすケースがいくつかある。その1つは電圧が上昇する場合で、停電につながる危険性がある。九州電力は太陽光と風力で電圧変動対策が必要になる可能性の大きい地域が合計11カ所あることを公表した。

» 2015年07月21日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 九州では再生可能エネルギーの導入がますます難しい状況になってきた。大規模な発電設備の開発が進んだ結果、地域によっては送配電ネットワークの許容範囲を超える可能性がある。九州電力は送配電ネットワークの増強が必要な地域に加えて、太陽光発電と風力発電の増加による電圧の上昇が問題になる地域を新たに公表した。

 太陽光発電設備を接続する場合に電圧変動の対策が必要になる可能性の大きい地域は6カ所ある(図1)。大分県の中部・西部から熊本県の北部までの4つの地域と、鹿児島県の中部・東部から宮崎県の南部にかかる2つの地域だ(地域名は九州電力の変電所による)。

図1 太陽光発電設備を接続する場合に電圧変動対策が必要になる可能性の大きい地域(2015年6月末時点。特別高圧の66kVか110kVで接続する場合)。カッコ内は発電設備の容量に対する電圧変動対策装置の容量比。出典:九州電力

 いずれの地域でも発電能力が大きい設備を特別高圧(66kVか110kV=キロボルト)で送配電ネットワークに接続する場合に、発電事業者は電圧変動対策装置の設置を求められる可能性が大きい。九州電力によると、電圧変動対策装置の設置費用は6〜7億円にのぼる。

 風力発電でも同様の問題があり、6カ所の地域が挙げられている(図2)。長崎県の北部と五島列島のほか、宮崎県の南部と鹿児島県の南部から西部にかけた広い範囲だ。原子力発電所がある川内地域も含まれている。6カ所のうち大隅地域は太陽光と風力の両方で対象に入る。

図2 風力発電設備を接続する場合に電圧変動対策が必要になる可能性の大きい地域(2015年6月末時点。特別高圧の66kVか110kVで接続する場合)。カッコ内は発電設備の容量に対する電圧変動対策装置の容量比。出典:九州電力

 電気事業連合会によると、再生可能エネルギーの発電設備が増加して送配電に問題が生じるケースは4種類ある(図3)。第1の問題は天候の影響による太陽光や風力の出力変動で、そのために送配電ネットワークを流れる電力の周波数が不安定になる。第2は地域の発電量が需要を上回って電力が余ってしまうケースだ。そして第3が電圧の上昇である。

図3 再生可能エネルギーの導入拡大に伴う送配電の課題と対応策。出典:電気事業連合会

 これまで再生可能エネルギーの導入拡大で問題視されていたのは、第1の周波数と第2の余剰電力、さらに第4に挙げられる送電容量の不足だった。新たに電圧変動の対策も必要性が高まったことで、該当する地域では太陽光や風力による大規模な発電設備の導入が困難になった。

 九州電力は送電容量が不足するために設備の増強が必要な地域は以前から公表してきた。2014年9月に大問題になった接続保留の措置を開始した時だ。対象地域は2015年6月末の時点でもさほど増えていないものの、大分県から鹿児島県まで広い範囲が含まれている(図4)。送配電ネットワークを増強する費用は電力会社ではなくて発電事業者が負担しなくてはならない。

図4 送配電ネットワークの増強が必要な地域(2015年6月末時点。離島を除く)。出典:九州電力

 ただし九州電力は送配電ネットワークの容量の限界を検討するにあたり、原子力発電所を全面的に稼働させたうえで、太陽光や風力による発電設備が最大限に稼働することを前提にしている。そうした状況は当面は起こりにくく、将来を見越して早めに対策を実施している状態だ。再生可能エネルギーよりも原子力を優先する姿勢が表れている。

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