LNGと並んで日本の電力を支える石炭には不安な要素がない。1990年代までは国内でも石炭の生産が続いていたが、現在ではほぼ100%を輸入に頼っている(図6)。石炭には製鉄などに利用する粘結性の強い「原料炭」と、電力をはじめ燃料に利用する「一般炭」があり、過去30年間に一般炭の輸入量が大幅に増えた(図6)。
石炭の輸入先はLNGと同様にオーストラリアが中心で、一般炭では74%、原料炭でも51%がオーストラリアからの輸入だ(図7)。そのほかはインドネシア、ロシア、カナダ、米国といったところで、日本の周辺地域が多い。石炭は価格面を含めて長期的に安定供給を受けられる有利な化石燃料である。
対照的に原油の輸入先は中東諸国が大半を占める。最大の輸入先はサウジアラビアで3割を超える(図8)。続いてアラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェートの順で、過去20年以上にわたって同様の状態を維持している。
2000年以降は原油の輸入量が減ってきているにもかかわらず、2013年度の時点でも中東に依存する割合は83.6%に及ぶ(図9)。中東の中では相対的に政情が安定している国が多く、原油の供給が止まるリスクは小さい。とはいえ依然として中東諸国を中心にOPEC(石油輸出国機構)の結束力は強く、価格の動向を含めて先行きを予測しにくい状況は変わらない。
日本の石油の消費量のうち、電力が占める割合は15%程度である(図10)。震災後に消費量が増加したが、今後は再び減少に転じる。自動車の領域でも石油の必要量は確実に減っていく。原油の輸入量が減れば、中東に対する依存度も下がってリスクは小さくなる。
日本が必要とする化石燃料は全体的に見れば、LNG・石炭・石油のいずれもが調達しやすい方向に進んでいる。世界的にCO2排出量を削減する取り組みが広がり、化石燃料の供給が悪化するような状況は生まれにくくなる。たとえ原子力発電所が再稼働しなくても、火力発電の高効率化と燃料価格の低下によって電気料金が下がる可能性は大きい。CO2排出量の抑制が課題として残るだけだ。
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